老後の安心を求めてマイホームを購入した夫婦
佐々木さん夫婦(ともに73歳)は、いま地方の公営団地の一室で暮らしています。つつましい二人暮らしですが、そこに至るまでには苦い経験がありました。
約20年前、夫婦が52歳ときのこと。長年住んでいた賃貸マンションの更新時期が迫っていました。
「このまま賃貸でいいのかしら」
「年を取ると賃貸は借りにくくなるしな。もし、ここに住めなくなったら次は見つかるのかな……」
50代に突入し、老後の生活が現実味を帯びてきた二人は、「住むところくらい確保しておかないと」と焦り始めました。
結局、郊外に中古マンションを購入。購入額は2,800万円。当時の貯金は500万円しかなく、頭金に投入。残り2,300万円を住宅ローンで賄うことにしました。銀行からは「完済は80歳まで可能」と説明されましたが、現実には繰上げ返済を前提にした設計です。夫婦は「退職金で一気に返せばいい」と考えていたのです。
しかし、思惑通りにはいきませんでした。60歳で退職金1,000万円を受け取りましたが、その多くは教育費の補填や生活費に回り、ローン返済には十分充てられず。また60歳からは雇用形態が変わり収入は大幅減。ローンの返済は月々約10万円がやっとになりました。
65歳になり年金受給のタイミングになっても、ローンは残っています。夫婦の年金月22万円で管理費や修繕積立金、光熱費や通信費、そして食費や日用品などの生活費など……。夫婦はアルバイトに励んだものの、70歳になるころには体力の衰えで弱音を吐くことが増えました。
「住む家を守りたい」と願って購入したはずの持ち家が、今や二人を追い詰める存在になっていたのです。
