(※写真はイメージです/PIXTA)

最近、「司法書士」や「法務省職員」を名乗る詐欺電話が全国で増えています。いわゆる「振り込め詐欺の亜種」のようなもので、官公庁や士業を装って金銭を騙し取る…という手口です。本記事では、法務省に実際に報告されている詐欺の事例を交え、騙されないための対策を見ていきます。司法書士法人永田町事務所の加陽麻里布氏が解説します。

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急増する「怪しい電話」の手口

近年、司法書士や法務省職員を騙る詐欺電話が全国的に増加しています。手口としては、

 

「会社法の改正で登記が必要になったので、至急、手数料○○円を振り込んでください」

「あなたの名義で供託されているお金があります。手続きをしないと没収されます」

「あなたの借金を債権回収会社が請求しています。すぐに支払ってください」

 

というように、法律に関するお金を請求する、という手口です。

 

こうした詐欺が増えているため、法務省も公式に注意喚起を発表しています。

 

法務省が直接個人にお金を請求することは絶対にありません。同じように、司法書士が突然電話をかけてきてお金を払え、ということも絶対にありえません。

 

少しでも話の内容に疑問を感じたら、一度電話を切って警察に相談するほか、法務省のホームページ等をチェックすることをお勧めします。

筆者が把握する「実際にあった詐欺電話」の具体例

ここからは、筆者が把握している、実際に報告されている怪しい電話の事例を交えながら、「客観的に見ておかしいところ」と「詐欺を見抜くためのポイント」を解説していきます。

 

【パターン1】「法務省の管理局です」と名乗る

 

もし「法務省の管理局です」、あるいは「法務省管理事務局です」という電話がかかってきたら、100%詐欺です。法務省には「事務」と名前の付いた部署はなく、「管理」という名前も「政策立案・情報管理室」「出入国在留管理庁」など、一般の人が関わらない部署にしか付けられていません。

 

そのため「法務省管理局の〇〇です」という電話は詐欺なので、すぐに切って警察に相談しましょう。

 

【パターン2】「もっともらしい書類名」をでっちあげ、手数料を請求する

 

「認定証書」「認定通知書」「最終告知書」といったもっともらしい名称の書類を「お送りします」という電話、あるいは「法務省が発行した証明書を送ります」といって「手数料を振り込んでください」と要求する電話も、詐欺によくある手口です。

 

とくに「いますぐ対応しないと法的措置を取ります」といった、圧力をかけるような電話は100%詐欺確定ですから、すぐに電話を切り、警察へ相談しましょう。

 

【パターン3】「法務省の認可法人」を騙ってお金を請求する

 

こちらも「もっともらしい名称」を騙った詐欺です。なお、法務省の所管法人のうち「認可法人」と呼べる法人は「公共嘱託登記司法書士協会」と「公共嘱託登記土地家屋調査士協会」の2つのみ。

 

そのため「法務省から認可を受けた法人」と名乗る場合も完全に詐欺です。

 

ほかにも「法務省の特殊法人」等を名乗るケースもあります。そもそも法務省の所轄法人に特殊法人はありません。仮に、認可法人と呼べる2つの法人のいずれかを騙って電話をかけてきたとしても、本来の職員であれば、電話口でお金を請求することはありえません。

 

【パターン4】「架空の機関」をでっち上げる

 

法務省にプラスして「〇〇機関」「〇〇管理局」といった「それっぽい機関名」を名乗り、「未払い訴訟が起きています」「この金額を払わないと裁判になります」といった電話がかかってきたり、ハガキや封書が届いたりする詐欺のケースも報告されています。

 

このような場合、法務省のホームページをチェックするなどして、本当に実在する機関かどうか、まずは落ち着いて検索してみてください。また、実際の裁判の通知がいきなり電話で知らされることは絶対ありません。こちらも警察に相談しましょう。

 

【パターン5】存在しない法律を持ち出す

 

実在しそうな「それっぽい法律」を騙るという詐欺の手口もあります。たとえば「〈電子消費者契約民法特例法〉に基づき、あなたには支払い義務があります」などともっともらしい法律を掲げて脅す手口がありましたが、こんな法律は存在しません。

 

「いかにもな単語」をつなげた法律名を出すのが特徴なので、騙されないように注意してください。こちらもすぐ電話を切り、すぐに警察へ相談することをお勧めします。

「自分自身の現状把握」が、なにより有益な対策に

法務省の名前を騙る詐欺にもさまざまな工夫が加えられ、いまやバリエーション豊かになっていますが、すべてにおいて共通する騙されないポイントは「自分自身の現状をしっかり把握しておく」ことです。

 

現状把握ができていれば、突然の請求にも「身に覚えがないから、詐欺だ」と認識できますし、それによって冷静な対応も取れるのです。

 

また、少しでもおかしいと思ったら、法務省や司法書士会などの公的機関のホームページ等、信頼できるサイトで情報を確認することも必須です。

 

そして、万が一の際の「相談先」をリストしておくことも重要です。もし請求トラブルが起きた際には、どこに相談するべきかをきちんと把握しておきましょう。「警察」はもちろん、ほかにも「消費者センター」「法テラス」といった選択肢がありますので、必要に応じて迷わず相談してください。また、少しでも怪しいと思ったら、自分だけで判断せず、必ず誰かに相談することが重要な対策になります。

 

 

加陽 麻里布
司法書士法人永田町事務所
代表司法書士

 

 

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