(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢期の家計は、年金や退職金、貯蓄といった限られた資源で支えられています。そのため、いったん生活設計が崩れると、立て直すのは容易ではありません。特に、成人した子どもが生活の支援を求めて戻ってくる“リターン同居”がきっかけで、家計が不安定になるケースは珍しくありません。親として支えたい気持ちがある一方で、現実の生活費は容赦なく家計を圧迫します。

「まわりに相談しても、“あんたが甘やかしてる”って」

こうした“親子の経済的共依存”状態は、高齢期の家計リスクとして近年注目されています。

 

 “パラサイト・シングル”との同居は、親の年金や貯蓄に頼る構図となることが多く、老後資金を圧迫する原因になると指摘されています。

 

また、親自身も「見捨てられない」「いずれ立ち直るはず」と期待して援助を続けてしまうケースが多く、経済的な自立を促すタイミングを逃すこともあります。

 

「まわりに相談しても、“あんたが甘やかしてる”って言われるだけ。でも、子どもが辛そうにしていたら、見て見ぬふりなんてできないじゃないですか」

 

とはいえ、田辺さん自身も心身ともに疲弊していきました。以前は楽しみにしていた趣味の教室にも行かなくなり、睡眠も浅くなったといいます。

 

「息子のことを考えると気が重くて。私たちの老後まで壊れていく気がして、怖かったです」

 

専門家はこうした状況に対して、「早めの第三者相談」が重要だと指摘します。

 

成人した子どもが精神的な問題を抱えている場合や、就労支援が必要な場合、自治体にはさまざまな相談窓口や就労訓練制度があります。家族だけで抱え込まず、制度の力を借りることが求められます。

 

田辺さんも、最近になって地域の窓口に相談し、就労支援の情報を得たといいます。

 

「やっぱり、専門の人と話すだけでも少しホッとしました。“親が全部背負う必要はない”って言われて、初めて気がつきました」

 

子どもを家に住まわせることは、親の老後設計や健康をも揺るがす“共倒れリスク”につながることもあります。私たちは今、“支える親”にばかり目を向けるのではなく、「支援を受けるべきは誰か」「支援を求められる環境になっているか」を、社会全体で問い直す時期に来ているのかもしれません。

 

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