「まわりに相談しても、“あんたが甘やかしてる”って」
こうした“親子の経済的共依存”状態は、高齢期の家計リスクとして近年注目されています。
“パラサイト・シングル”との同居は、親の年金や貯蓄に頼る構図となることが多く、老後資金を圧迫する原因になると指摘されています。
また、親自身も「見捨てられない」「いずれ立ち直るはず」と期待して援助を続けてしまうケースが多く、経済的な自立を促すタイミングを逃すこともあります。
「まわりに相談しても、“あんたが甘やかしてる”って言われるだけ。でも、子どもが辛そうにしていたら、見て見ぬふりなんてできないじゃないですか」
とはいえ、田辺さん自身も心身ともに疲弊していきました。以前は楽しみにしていた趣味の教室にも行かなくなり、睡眠も浅くなったといいます。
「息子のことを考えると気が重くて。私たちの老後まで壊れていく気がして、怖かったです」
専門家はこうした状況に対して、「早めの第三者相談」が重要だと指摘します。
成人した子どもが精神的な問題を抱えている場合や、就労支援が必要な場合、自治体にはさまざまな相談窓口や就労訓練制度があります。家族だけで抱え込まず、制度の力を借りることが求められます。
田辺さんも、最近になって地域の窓口に相談し、就労支援の情報を得たといいます。
「やっぱり、専門の人と話すだけでも少しホッとしました。“親が全部背負う必要はない”って言われて、初めて気がつきました」
子どもを家に住まわせることは、親の老後設計や健康をも揺るがす“共倒れリスク”につながることもあります。私たちは今、“支える親”にばかり目を向けるのではなく、「支援を受けるべきは誰か」「支援を求められる環境になっているか」を、社会全体で問い直す時期に来ているのかもしれません。
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