前回は、床下から建物を支える「ウレタン樹脂」の耐久年数や、このウレタン樹脂には、フロンが使われていないことなどを解説しました。今回は、この工法に対する、一般的な疑問や不安に答えていきます。

将来の規制強化を見越してノンフロンにこだわる

フロンを使っていると、建物の持ち主側にもデメリットがあるのですか?

 

デメリットが生じる可能性は、大いにあります。

 

たしかに、フロンが使われているからといって、床下の樹脂の中に閉じ込められている間は、ただちに健康被害、環境破壊などが問題になるわけではないのかもしれません。フロンと一口にいっても多種多様ですが、ごく一部のものを除けば、生体への毒性はない物質と、一般的に認識されています。

 

しかし、フロンによるオゾン層破壊が確認され、先進国が全廃に向けて舵を切っています。産業廃棄物、二酸化炭素に関する問題を見ても、環境に影響を与えるものの排出には相応の負担を義務づけることが時代の潮流になっているわけですから、それがいつ、どのような形でフロンについても適用されるかわかりません。

 

将来、発泡ウレタンのフロン類についても、その処理や、処理費用の負担が排出する企業に義務付けられるとしたら、施工を依頼してくださったお客様を裏切ることになる。ですから、「完全ノンフロン」の実現は、私にとって絶対の条件でした。

雨水によるウレタン樹脂の劣化は考えられない

Q長年の雨でウレタンに水が溜まって、床下が腐ったりしませんか?

 

この工法では、まずありえません。

 

床面の下の土間コンクリート自体、そもそも吸水性が5〜10%と低く、基本的には乾燥している材料です。

 

その下の地盤に、吸水性のないウレタン樹脂を入れるのですから、水が溜まるということはありえません。

 

このウレタン樹脂は、台所用のウレタンスポンジなどと違って、水分が浸入しても内部に溜まらない構造になっています。

 

モノを洗うためのウレタンスポンジは吸水性がよくなければなりませんから、よく見てみると、気泡が連続していることに気づくでしょう。ひとつの気泡に水分が浸入すれば、連続した周囲の気泡にすぐに行き渡ります。

 

それと正反対に、沈下修正用のウレタン樹脂は気泡が独立しているのです。そのため、もしもひとつの気泡が水分を溜めこんだとしても、周囲の気泡には影響を及ぼすことがないのです。

軽いウレタン樹脂では再沈下の可能性は低い

Q修正すれば、二度と沈下は起きないのですか?工事をしなくてもよいのですか?

 

地盤がどんどん沈み続けるような不運な土地でなければ、再沈下は起こりにくいといえます。

 

床下に注入する材料にある程度以上の重さがあると、その重みと建物の重みによって地盤が圧迫され、土壌内の水分・空気が追い出されて「圧密沈下」が起きることがあります。つまり、再び沈下が起きる可能性があるのですが、この修正工法で使用する樹脂は水の10分の1以下の重さしかありません。

 

その一方で、前述のように、1平方メートル当たり最低でも37トンの重さを支えるだけの強度があります。つまり、下の地盤には影響を与えないだけ軽い材料が、建物という重いものをしっかり支える。ですから、再び修正工事が必要になるという事態に至ることはありません。

本連載は、2016年11月25日刊行の書籍『改訂版 不良品が多い工場の原因は地盤が9割』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

改訂版 不良品が多い工場の原因は地盤が9 割

改訂版 不良品が多い工場の原因は地盤が9 割

松藤 展和

幻冬舎メディアコンサルティング

4年前出版し関係者の間で話題沸騰したあの書籍が、「傾いた床」による様々なリスクを追加収録し、 【改訂版】としてパワーアップして帰ってきた! たった0.6度の床の傾きで、業務も傾く! 日本の建物の9割が地盤に起因…

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