前回は、精密機器メーカーのクリーンルームでの施工についてお伝えしました。今回は、床下から建物を支える「ウレタン樹脂」はどれぐらいの期間、品質を保てるのかを見ていきます。

劣化が起こりにくい沈下修正用のウレタン樹脂

ここまで、土間コンクリート下に注入された硬質発泡ウレタン樹脂が荷重の大きい建物をしっかり支える様子を説明してきましたが、工事後、歳月を経るとそのウレタンが劣化するのではないかと、懸念される方もいらっしゃるかと思います。

 

生活の中のウレタン製品では、劣化を経験した方も多いと思いますから、無理もないことです。

 

たとえば、靴。ほとんど履かずにしまっておいたのに、いざ履こうとして取り出したらボロボロに崩れていた……。履いている途中に、突然、崩れ出した……。

 

これらは、たしかにウレタンが劣化した結果です。ウレタンにはさまざまな種類があり、「ポリエステルポリオール」を使用したウレタン樹脂は、水と結合して加水分解を起こしてしまうのです。

 

では、沈下修正に使うウレタン樹脂も床下で劣化してしまうのでしょうか。仮にそうだとしたら、修正直後からどんどん劣化が進むことになりますから、ある程度の頻度で工事を繰り返さなければならないことになります。

 

しかし、ご安心ください。

 

沈下修正の硬質発泡ウレタン樹脂はポリエステルポリオールを使用していませんから(「ポリエーテルポリオール」を使用)、加水分解を起こすことはありません。

 

紫外線には弱いのですが、土間コンクリート下に閉じ込められたウレタンが紫外線を浴びることはまずありませんから、劣化は起こらないのです。こうして、耐久性の高いウレタン樹脂は、建物の寿命が来るまでしっかりと建物を支え続けます。

オゾン層破壊の要因となるフロンを不使用

そして、このウレタン樹脂は、完全ノンフロンです。

 

ご存知のように、フロン類は地球大気圏の上層にあるオゾン層に重大な影響を及ぼします。オゾン層は生物にとって有害な紫外線を吸収する働きを担っていますから、その消失は、地上の生態系にとって由々しき問題です。そのため、特に先進国の間では、すでに「フロンは使わない、つくらない、買わない」ことは、抗いようのない潮流になりました。

 

将来、建物が取り壊され、ウレタンも取り出されて廃棄されることになった時に、仮にフロンが使用されていれば、何か特別な手段を講じない限り、大気中にそのまま放出されることになってしまいます。大気中に放出されたフロンは紫外線によって分解され、オゾンとの反応を繰り返すことでオゾン層を破壊していきます。

 

ですから、私はこの工法を実用化する際、材料となるウレタン樹脂は「完全ノンフロンであること」に執着しました。当時、すでに工場成形のウレタンではノンフロンが実現されていたのですが、現場発泡のウレタンではフロンの使用が技術的に不可欠だったのです。

 

そして、硬質発泡ウレタン樹脂を専門とする日本唯一のメーカー、日本パフテム社と出合うことができ、私がどうしても実現しなければならなかった完全ノンフロンの材料をつくり上げることができたというわけです。

本連載は、2016年11月25日刊行の書籍『改訂版 不良品が多い工場の原因は地盤が9割』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

改訂版 不良品が多い工場の原因は地盤が9 割

改訂版 不良品が多い工場の原因は地盤が9 割

松藤 展和

幻冬舎メディアコンサルティング

4年前出版し関係者の間で話題沸騰したあの書籍が、「傾いた床」による様々なリスクを追加収録し、 【改訂版】としてパワーアップして帰ってきた! たった0.6度の床の傾きで、業務も傾く! 日本の建物の9割が地盤に起因…

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