精密機器の生産ラインをなるべく止めたくない
Qクリーンルームなのでホコリは厳禁ですが、操業を続けられますか?
問題ありません。
九州の有明海に近い、粘性土の地盤上に立地している精密機器メーカーの工場では、建物の重みで沈下が発生。沈下量は、最大110ミリに及んでいましたが、面積からいって、順調に作業が進めば、2、3日で終わってしまうくらいの規模でした。
しかし、その工場の業種は、半導体関係の精密機器製造。工場内はクリーンルームになっており、しかも、極力、生産ラインは止めたくないという要望がありました。
いくらクリーンルームでも稼動中でなければ、機器を厳重にカバーするなどの養生を行い、作業後の浄化を徹底すれば、まだ多少の作業の自由度はあります。しかし、操業を止めないどころか、極力ラインを止めないというのは、非常に厳しい条件です。
作業区域の気圧を低くし、周囲への影響を抑える
そんなわけで、お客様とも相談の結果、こんな手順を考えました。
まず、施工面積全体を4ブロックに分割。一度に施工を行う箇所を4分の1に限定し、施工中は周辺をパーティションで囲み、他の部分と完全に隔離してしまう。当然ながらパーティションで区切られた作業空間内部に関しては、致し方ないことですがラインの稼動は停止です。
さらに、その作業空間内部からは工場の外までダクトを通し、送風機で空気を吸い出すことにしました。空間を囲っているのは臨時のパーティションですし、作業の進行に従って組み直す必要もあります。コスト面から考えても、クリーンルームレベルと同じ気密性は保持できません。しかし、作業空間内を負圧にすることで、万が一にもホコリの混じった空気が外に漏れ出ないようにしたわけです。
また、設置されているのは精密機械の製造機器ですから、沈下修正を行うに従って、機械の水平レベルは厳密な再調整が必要になってきます。
施工期間は標準よりも長くかかりましたが、生産ラインは最小限しか停止させることなく、工場全体としては操業を続けながら、無事に修正を完了することができました。