ジャクソンホール会議の講演で、利下げに「含み」
パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は8月22日、ワイオミング州ジャクソンホールで任期中最後となる講演を行い、9月の連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げに含みを持たせた。
複数の不確実性が交錯する現状において「政策対応の柔軟性を維持する」と強調したことを受け、市場は直後に反応し、S&P500種株価指数は2%前後上昇した。
歴代議長が警鐘鳴らす「独立性の危機」…FRBと政治の緊張関係
しかし、その背景には「金融政策と政治圧力」という深刻な課題が横たわる。トランプ政権による利下げ要求やFRB理事人事への介入姿勢が鮮明になり、中央銀行の独立性が揺らぐとの懸念が広がっている。
この点については、イエレン前議長とバーナンキ元議長が7月に米紙ニューヨーク・タイムズに連名で寄稿し、「FRBの独立性が損なわれれば、米経済に永続的かつ深刻な損害をもたらす」と警告した。両氏は、政治的に不人気であってもインフレ抑制のために厳しい決断を下すFRBの姿勢こそが、世界からの資本流入を支える米経済の最大の強みだと指摘。次期議長には「政治と適切な距離を保てる人物」を選ぶよう求めている。
FRBと政治の緊張関係は歴史的に繰り返されてきた。第2次大戦後、財務省の要請で国債発行を支援するため金利を抑制した結果、米国は2ケタのインフレに陥った。1951年に「政府債務管理と金融政策の分離」に合意し独立性を回復したものの、その後も圧力は続いた。ニクソン大統領が1972年の選挙を前に低金利政策を強く迫り、米国がスタグフレーションに陥ったのは典型例だ。
インフレ軽視は最大のリスク
三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩氏(チーフマーケットストラテジスト)は今回の状況を次のように分析する。
「これほどあからさまな圧力は過去に例がないでしょう。政権の意向で理事が固められれば、景気刺激を優先してインフレを軽視するリスクがあります。インフレ悪化は持続的成長を根底から脅かしかねず、極めて避けたいシナリオです」
また、市川氏は9月FOMCでの利下げについて「パウエル議長はデータ主導の姿勢を崩していません。雇用統計や消費者物価指数(CPI)の内容次第では0.25%の利下げもあり得ますが、それはトランプ大統領の圧力ではなく、あくまで経済データに基づく判断です」と解説する。
共和党多数の上院、どこまで中央銀行の独立性を守れるか
市川氏はさらに、来年5月のパウエル議長任期満了後の展開に警戒感を示す。
「トランプ氏が政権寄りの人物で理事会を固めようとしているのは明らかです。次期議長にはウオラ理事やボーマン副議長、さらにはジェファーソン副議長が昇格する可能性もある。共和党が多数を占める上院で、どこまで中央銀行の独立性を守れるかが焦点になります」
また、クック理事の解任問題が司法に持ち込まれている点にも触れ、「差し止めが下される可能性はあるものの、最終的に最高裁まで持ち込まれれば政治介入色が一層強まります。ドル資産への信認低下を市場が懸念する場面が訪れないか心配です」と指摘する。
日本経済への波及懸念
市川氏は、日本への影響についても警鐘を鳴らす。
「FRBの独立性が損なわれれば、ドル建て資産への信認が揺らぎ、金融市場の動揺が日本経済に波及するリスクがあります。中央銀行の独立性を守ることは、安定した物価と持続的成長の前提条件です」
ジャクソンホールでのパウエル議長の発言は、市場に利下げ期待を与える一方で、FRB独立性をめぐる歴史的課題と政治との緊張関係を改めて浮き彫りにした。今後のFOMCは、経済指標の動向だけでなく、政治力学の影響も強く受ける展開が避けられない。
THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班
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