(※写真はイメージです/PIXTA)

ロシアの大規模攻撃により、一段と緊迫するウクライナ情勢。そんな中、北欧・バルト諸国は対ウクライナ支援の拡大を共同声明で発表した。エストニアは停戦後に平和維持部隊を派遣する意向も示しており、NATO東部最前線としての役割を強めつつある。地政学的に厳しい立ち位置にありながら、同時に経済成長を模索する国々の今後を探る。※本連載は、THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班が担当する。

いまのバルト三国を築き上げた「独自の歴史」と「外交姿勢」

バルト三国は、当初ソ連、続いてドイツに占領され、第二次世界大戦中に再びソ連に併合された歴史を持つが、1991年のソ連崩壊後は独自路線を選択した。CIS(独立国家共同体)には参加せず、日本とも独自に租税条約を締結している。

 

この背景には、再び大国の影響下に置かれることへの強い警戒心がある。2025年8月には、リトアニア領にベラルーシ方面から軍用ドローンが侵入し、NATOに支援を要請する事態も発生した。

投資誘致・企業活動活性化を見据えた「独自の税制」

国際課税研究所首席研究員の矢内一好氏は、「バルト三国はいずれも小規模経済であるが、投資誘致や企業活動の活性化に向け独自の税制を整えている」と指摘する。

 

主な税制の特徴は以下になる。

 

リトアニア:法人税率16%、所得税最高32%、VAT21%。杉原千畝の「命のビザ」で知られる歴史的背景も国際的認知を高めている。

 

ラトビア:法人税率20%。経済特区への投資では条件付きで法人所得の最大80%を減額可能である。所得税最高率は21%。

 

エストニア:内部留保やキャピタルゲインには課税せず、配当など社外流出時のみ22%(定期配当は10%)。利益を留保する限り課税を免れる独自制度を採用している。

 

矢内氏は、「ラトビアとエストニアの『社外流出課税』は世界的にも珍しい制度を採用しています。発想は『支出税』に近く、投資家にとって魅力的です」と説明する。

経済規模と課題

2024年のGDPは、リトアニア約849億ドル、ラトビア約435億ドル、エストニア約428億ドルである。1人あたりGDPはエストニア約3.12万ドル、リトアニア約2.94万ドル、ラトビア約2.34万ドルである。2025年の成長率見通しは、リトアニア2%台半ば、エストニア1%前後、ラトビアはマイナスから回復基調である。

 

ただし、インフレ率の高止まりやエネルギー価格上昇が続き、特にエストニアの2025年インフレ率は約3.8%と予想される。税務の透明性や行政信頼度の向上が、長期的な投資環境改善の鍵となるであろう。

エネルギー独立と防衛強化

ロシア依存からの脱却も急務である。2025年2月、バルト三国はロシア送電網から完全に切り離され、EU統合電力網に接続した。これは単なるインフラ整備に留まらず、地政学的独立を象徴する出来事である。

 

防衛面では、リトアニアとエストニアが2026年以降、防衛支出をGDP比5%以上に引き上げる方針を示している。ウクライナ戦争の教訓を踏まえ、欧州でも最高水準の抑止力強化を目指している。

不安定な外部環境下で「経済成長」「安全保障強化」の両立を追求

注目すべきは、リトアニアとポーランドにあるロシアの飛び地・カリーニングラードである。

 

「カリーニングラードは軍港と経済特区を抱えており、ロシアにとって戦略拠点とされています。ただし、ロシア本土とは地理的に接していないため、今後のウクライナ情勢とも関連し、微妙な位置付けとなっています。NATOが『最も脆弱』と呼ぶスヴァウキ・ギャップを巡る緊張は、今後も続くでしょう」(矢内氏)

 

バルト三国の安全保障環境は厳しい状況にある。

 

「今後どうなるのかは不透明ですが、バルト三国は、ソ連崩壊時の政治の方向性から推測すると、『反ソ連、反ロシア』の立場が明確です。それほど、この三国は、隣接する大国に虐げられた歴史があります」(矢内氏)

 

不安定な外部環境にさらされながらも、経済成長と安全保障強化の両立を追求する三国。ウクライナ情勢の長期化により、欧州の前線国家としての役割は増す一方、内部課題である生産性向上や非公式経済の縮小を克服できるかが、中長期的安定の鍵となるであろう。

 

 

THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班

 

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