「どうして俺だけ、塾行ってないんだろう…」
悠真さんは、偏差値68の公立進学校に通う高校3年生。学校の進学実績は良好で、学年上位層の多くが国公立大学や有名私立を目指しています。悠真さん自身も、国立の理系学部を第一志望に掲げ、日々の勉強に励んでいます。
しかし、ひとつだけ悩みを抱えていました。
「周りの子はほとんど予備校に通っているんです。XX予備校の共通テスト対策とか、数学特訓コースとか…みんな当たり前のように話していて。でも、僕だけ通ってない」
夏の三者面談を終えたあと、悠真さんは父・拓哉さん(仮名・45歳)に、ぽつりと打ち明けました。
拓哉さんは地方の中小企業で正社員として働くサラリーマン。手取りは月25万円前後。妻は扶養内でパート勤務をしており、月5〜6万円ほどの収入があります。
家族は4人。中学生の長女と、小学生の次男もいます。決して貧困とは言えないものの、習い事や学費、食費、光熱費の高騰が続くなか、貯金に回す余裕はありません。
「塾代だけでも月3万〜5万円。模試や講習を合わせると、年間で50万円は軽く超えます。中学生の娘の塾も始まるし、今の家計では正直、悠真ひとりにそこまで回せない」
拓哉さんはそう語ります。
「オンライン塾なら?」という選択肢もありますが、悠真さんの自宅は山間部にあり、ネット回線も安定せず、日々の通信量も限られています。最寄りの本格的な予備校は、電車とバスを乗り継いで片道90分。通学に加えて毎日往復3時間の塾通いは、学業にも体力にも支障が出かねません。
それでも、悠真さんは焦りを募らせていきました。
「このまま独学で大丈夫なのかな…。模試の判定は上がっているけど、他の子は二次試験対策の講座も受けていて、自分だけ取り残されている気がする」
