(※写真はイメージです/PIXTA)

ひとり暮らしが当たり前になった時代とはいえ、親の老いが見え始めたころ、ふと「実家に戻った方がいいのかもしれない」と考える人も少なくありません。実際、物価高騰や孤独感、仕事のストレスなどを理由に、30〜40代の未婚者が実家に“Uターン”するケースも増えています。けれど、その選択が必ずしも心地よい結果を生むとは限りません。親との価値観のズレや生活リズムの違いに直面し、「帰らなければよかった」と後悔する人もいるのです。

「親と暮らすか、ひとりで生きるか」それぞれの利点とリスク

実家に戻る、という選択は一見シンプルですが、意外な落とし穴もあります。

 

たとえば、実家が親名義の持ち家である場合、子どもは“所有者ではない居住者”となります。生活費や家事分担、固定資産税や光熱費の支払いなど、明文化されていないルールが積み重なり、トラブルに発展するケースもあります。

 

また、将来的に親が要介護状態となった場合、「介護の担い手」として期待されるのは“同居している未婚の子”が中心になることが多く、本人の意思と関係なく“なんとなく”介護の責任を背負わされる例もあります。

 

「母は“まだ大丈夫”と言いますが、何となく私に期待しているのは感じました。病院の送迎や買い物も、“ついでに行ってくれたら助かるわ”って…。私がここにいるから、母自身が自立をやめてしまいそうで、それが怖かったです」

 

真理子さんは結局、1ヵ月も経たないうちに実家を出て、都内のマンションに戻りました。母の体調が大事に至らなかったこともあり、週末に様子を見に行くという形での関係の再構築を選んだのです。

 

「親と子が、ずっと近くにいることが幸せとは限らない。お互いが尊重できる距離を見つけるまでには、時間がかかると思いました」

 

親と暮らすか、ひとりで生きるか――。

 

どちらにも利点とリスクがあります。だからこそ、なんとなく実家に戻るのではなく、自分と親の今後の生活や距離感を含めて、あらかじめ話し合っておくことが大切です。

 

少子高齢化・未婚化が進むなかで、「親と未婚の子」の関係はこれからますます増えていきます。

 

親が元気なうちにこそ話すべき問い――、「帰ってきて」と言われたとき、本当に帰ることが正解なのか。「近くにいたい」と思ったとき、その距離は「同居」でなければいけないのか。

 

人生のなかで、家族とのちょうどよい距離を探るために、私たちはもっと柔軟に選択していいのかもしれません。

 

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