(※写真はイメージです/PIXTA)

親から「年金だけでは生活が苦しい」といわれれば、多くの子どもはサポートしようとするだろう。しかし、実態は「聞いている話」と少々違っているケースもあるようだ。簡単ではない「肉親への支援」の実情を見ていく。

母を問い詰めるとまさかの逆切れ、理由は…

陽子さんは、母親の退院を見計らって電話をかけ、聞いた話について問い詰めた。すると、最初は言い訳をしていた母親が逆切れ。

 

「要するに、同居しているお嫁さんのご両親に張り合うため、母親がお金を渡しているらしいんです。自分のお小遣いから出すのなら〈勝手にすれば?〉ですけど、〈生活が苦しい〉といって私から取り上げたお金を使うのは許せません…」

 

「私だって、自分の生活が精いっぱい。老後のお金も心配なのに…」

 

厚生労働省『令和4年 国民生活基礎調査』によると、親に仕送りをしている世帯は全体の1.9%。2022年の総世帯数5,431万世帯のうち、約100万世帯が親に仕送りをしていることになる。

 

世帯主の年齢別では50代が最も多く3.4%。20代世帯は3.1%、30代世帯は2.6%、40代世帯は3.0%、60代でも2.4%が仕送りをしている。

 

仕送り額の平均は月8万円。分布を見ると「月2万~4万円未満」が29.9%で最多、「4万~6万円未満」が20.4%と続く。「月10万円以上」という世帯も18.8%あり、全国で20万世帯近くが親へ10万円以上を仕送りしているのだ。

 

一方で、同令和5年調査によれば、65歳以上の単身高齢者831万人のうち、年間所得100万円未満は17万人弱、150万円未満に広げると35万人弱。退職金や貯蓄によって差はあるものの、子からの仕送りに頼らざるを得ない高齢者も少なくない。

 

とはいえ、佐藤さんの場合は事情が違うだろう。

 

高齢者の孤独や生活困窮は社会的課題であり、「子が親を支えるべき」という考えは依然として根強い。しかし現実には、家計に余裕がある40~50代は少なく、支援したくてもできない家庭は多い。

 

「毎月5万円の捻出がどれほど大変だったか。母にはまったくわからなかったのでしょうね」

 

陽子さんは、翌月から仕送りをやめるという。

 

 

[参考資料]

厚生労働省『令4年/令和5年 国民生活基礎調査』

 

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