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父の死後、知らぬ間に「相続放棄」?
「勝手に相続放棄なんてしてないよ!」「じゃあ、なんで知らされなかったんだ!?」
都内に住む主婦・千佳さん(仮名・42歳)が、兄と最後に交わした会話は、怒号と涙に満ちたものでした。
そのきっかけとなったのは、2024年の春に亡くなった父親が遺した「ある家」。地方にある築40年の平屋で、固定資産税評価額は約300万円。空き家となって数年が経ち、誰も住んでいないその物件が、兄妹の関係を修復不能なほど壊してしまったといいます。
「まさか、あんな小さな家が、こんな争いを生むなんて思いもしませんでした」
父親が亡くなったのは、千佳さんが東京で新生活を始めて間もない頃でした。兄の達也さん(仮名・45歳)が地元で一人暮らしをしており、死亡届や火葬、年金の手続きなど、実務的な部分はほぼすべて達也さんが担ってくれていたといいます。
「私も東京から駆けつけて、通夜と葬儀には参列しましたが、あとは兄に任せっきりでした。忙しい中、感謝していたのですが…」
しかし、四十九日を過ぎたころから状況が変わっていきました。父の家が空き家として残されていることが気になった千佳さんが、「家どうするの? 売るなら少しはお金になるんじゃない?」と兄に連絡したところ、返ってきたのは意外な返答でした。
「は? あの家、お前、相続放棄しただろ?」
千佳さんは驚愕しました。相続放棄の手続きなど、一切していなかったのです。
話し合いを重ねるうちに、どうやら兄が一人で家裁に相談し、父の家については「価値がない」と判断し、相続放棄を視野に動いていたことがわかってきました。さらに、父が残していた通帳や印鑑、年金の還付金なども、兄が一括して処理していたことも明らかに。
「私には“遺品はほとんどない”って言っていたけど、父の通帳も処分していたんです。何に使ったのか聞いても、はっきり答えてくれない。もう信用できなくなりました」
千佳さんは、弁護士に相談し、正式な相続手続きがどうなっていたかを調べました。その結果、「相続放棄」はされておらず、単に兄が財産放棄や処分を「事実上進めていただけ」であることが判明しました。
つまり、法的には兄妹ともに「相続人」だったのです。
