“じいじ・ばあば”のサポートが手厚いママ友に嫉妬
東京都内で暮らす兼業主婦の田中麻美さん(仮名・35歳)は、4歳になる娘と3歳年上の夫の悠介さんと3人で暮らしています。最近、義母(70歳)のことで頭を悩ませていました。麻美さん自身も仕事に育児に追われる日々を送りながら、できる限り家族を支えてきました。しかし、周囲のママ友の話を聞くたびに、惨めな気持ちになるのです。
麻美さんの周りのママ友や子供を産んでもバリバリ仕事している友人たちは、都内や実家や義実家があって祖父母のサポートを受けている人が多いのですが、麻美さんは実家も九州と遠く実家のサポートは受けられません。「今夜はばあばに子供を預けたから残業できるんだ」「じいじとばあばがまた子供の服を買ってくれたんだけど、趣味じゃないんだよね」なんていうちょっとした話や愚痴にもモヤモヤがおさまりません。
実は夫の実家、つまり義実家は電車で30分ほどの東京都下にあるのですが、ちょっとした用事でよく孫を預かってくれていた義母も、最近は「予定が入っているの」と断ることが多くなってきました。「お義母さん、一体どうしちゃったの?」と疑心暗鬼に陥った麻美さん。周りに比べて自分は恵まれていないという気持ちも強くなり、すべての不満が義母に向かいました。
「自分だけ楽しんで許せない」義母への不満が爆発
娘を寝かしつけたあと、「お義母さん、杏(麻美さんの娘の名前)のことかわいくないのかな……」とつい漏らしてしまった麻美さん。すると、夫から義母の事情を聞かされました。「母さん、退職してやっと自分の時間を楽しんでいるんだって。実は『推し活』にハマっていて、楽しそうにしているらしい」
夫の言葉に、心底驚いた麻美さん。「母さんはずっと働きながら俺たち兄弟の世話をして、父さんの世話もしてきたんだ。やっと自分の時間ができたって喜んでいるって弟が言ってたよ」と話を続ける夫でしたが、麻美さんの耳には届いていません。「お義母さん、予定って推し活のことだったの? 私が苦労しているのにも関わらず自分だけ楽しむなんて許せない!」
麻美さんは週末、義母の元を訪ねて直接思いをぶつけることにしました。麻美さんが週末に義実家を訪ねることを夫に伝えると「週末? いいよ、たまには杏の顔を見せないとな」と呑気な様子。そんな夫を見て麻美さんはさらにイライラが募るのでした。
義母が推し活に目覚めたワケ
その週末、義実家を訪れた麻美さん一家。麻美さんとしては「孫の面倒をみたくないんですか?」と直接聞きたかったのですが、さすがに大人としてどうかと思ったので、「最近、推し活にハマっているみたいですね」と話を切り出しました。
すると、義母は静かに語り始めました。「私の時代はね、まだまだ女性がバリバリ働くなんて時代ではなかったのよ。もちろんいるにはいたけどね。今以上に女性が仕事をして子どもを育てるのは大変だった。それが当たり前だった。でもね、退職して気づいたのよ。あ、私は自分のことをいつも後回しにしてきたんだって。ちょうど子供たちも結婚して、お父さんと2人きりの生活になったタイミングだったから、いろいろ考えたの。それで、自分の時間を楽しもうと思っていた矢先に孫の世話を頼まれて、今度は孫のために尽くすのかと思ってしまったのよ」
「いきなり本音を話した!」と驚く麻美さんをよそに、さらに義母は続けました。
「でも、お友達に誘われて推し活を始めたらさらに新しいお友達もできたの。最初は『孫の世話もしないでこんなことしていていいのだろうか?』と思ったんだけれど、お友達にも刺激されて、自分の“好き”を優先していいんだと思えるようになったの。推し活を楽しめるのは、長年働いてきた蓄えがあるおかげよ。だから麻美さんも『よき妻になろう』とか『よき母になろう』とか考えすぎないで自分の時間も大切にしてほしいの。言う機会がなかったから言わなかったけれど……。ごめんなさいね。だから矛盾しているかもしれないけれど、もっと気軽に助けを求めてもいいのよ。そりゃ私も予定があって難しいときは断るけれど、時間がないわけではないから」
