(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢化が進むなか、相続をめぐる家族間トラブルが増えています。とくに、金銭的価値が高くない“地方の空き家”や“使い道のない不動産”がきっかけで、兄弟姉妹が絶縁状態になるケースも少なくありません。相続財産の金額以上に、家族関係を壊す「誤解」と「事後報告」が深い溝を生んでいるのです。

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「たった300万円の家」がもたらした争い

今回のケースでは、父が遺した家の評価額は300万円、売却価値はそれ以下ともいわれていました。しかし、相続が絡むと、単なる金額以上の感情が渦巻くことがあります。

 

「自分は何も知らされなかった」

「勝手に財産を処分された」

「言い出しにくくて黙っていた」

 

こうした小さなボタンの掛け違いが、家族関係に決定的なひびを入れるのです。

 

千佳さんは、兄との話し合いがこじれたのち、最終的には法的に分割協議を行うことを選びましたが、兄とはその後、連絡を取らなくなったといいます。

 

実はこうした「相続による兄弟姉妹の絶縁」は、決して珍しくありません。

 

とくに「地方の空き家」や「価値が微妙な不動産」は、相続人の誰か一人が引き取って管理・処分するケースが多く、不公平感や事後報告による不信が原因で、兄弟姉妹が口をきかなくなった例も少なくないのです。

 

相続トラブルを未然に防ぐには、以下の3つのポイントが重要です。

 

■早めの家族間共有

 

葬儀後や法要のタイミングで、財産や手続きについて「全員で共有する時間」を持つことが大切です。LINEやメールではなく、直接会うか電話で話すのが理想です。

 

■専門家の活用

 

少しでも「複雑かも」と思ったら、司法書士や弁護士への相談を検討すべきです。家族内だけで処理を進めると、誤解やトラブルの元になることも。

 

■親自身による準備

 

元気なうちに「エンディングノート」や「遺言書」を残すだけで、残された家族の混乱を大幅に減らすことができます。

 

「300万円の家なんて、売ってもどうせ200万円以下ですよ。でも、家族の信頼は、金額では買えませんでした」

 

千佳さんは、いまでも父の家の写真を見るたびに胸が痛むといいます。

 

相続において最も壊れやすいのは、「財産」ではなく「家族の関係性」です。だからこそ、少額だからこそ慎重に、感情よりも透明性を重視する──それが、遺された人々にとって最も大切な“相続のマナー”なのかもしれません。

 

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