氷河期世代の父、突然の息子の退職に唖然
東京都内で会社員として働く佐藤篤史さん(仮名・52歳)は、地方出身。その地域では「頭がいい」とされる県立高校を卒業し、東京の国立大学を卒業しましたが、バブル崩壊後の就職氷河期に直面し、希望の企業には入れず、やむなく中堅大手企業に就職しました。就職してからも数年間は東京での生活費も家計を圧迫し、「家賃や光熱費をやりくりするだけで精いっぱい」だったと振り返ります。
一方、息子の雄大さん(仮名・24歳)は、都内の有名私立大学に進学。偏差値は篤史さんより低めですが、実家暮らしで生活費の負担はほとんどありません。入社先は誰もが知る大手企業で、年収は350万円ほど。しかし、入社からわずか2年足らずで退社を決意しました。
国税庁の「令和5年分 民間給与実態統計調査」によると、20代前半の平均年収は267万円。同世代と比べても雄大さんの年収は高いと言えます。
年収は悪くないけれど…雄大さんの葛藤
篤史さんは息子の退社理由を聞いて驚きました。企業のマーケティング部署に所属している雄大さんは「自分の努力や成果が評価されない」と不満を抱えていましたが、佐藤さんにはその感覚が理解できません。「東京で暮らすだけでも精いっぱいだった自分の時代とはまったく違う」と思い、思わず「何が不満なのか?」「お前、甘いんじゃないのか?」と一喝したのです。
雄大さんにとって問題だったのは、給与額の多寡ではなく「自分の成果を正しく評価される実感」でした。会社の評価制度はチーム全体の売上や業績を重視し、個人の努力や挑戦は給与や昇進にほとんど反映されません。「一生懸命やっても、誰も見てくれない」と雄大さんは感じ、職場でも孤独感を深めていったと言います。
リクルートマネジメントソリューションズの調査「働く人の本 音調査 2025」によれば、20代は「個人の成果が評価されるかどうか」が年収の満足度に大きく影響します。個人の成果を十分に評価されていないと感じていると、年収への納得感が大きく低下する傾向が見られました。また、すべての世代に共通していたのが、「自分の価値観や働き方が、組織風土とフィットしているかどうか」が、年収満足度を下支えする重要な要素であることもわかりました。
同僚の一言でハッとしたこと
当初、篤史さんは息子の退職を受け入れられず、妻や会社の同期に愚痴をこぼしたといいます。その際、同じく子育て中の同僚から「俺たちの時代とは違うんだよ。今の子は“評価されている実感”がないと続かないらしい」と諭され、ハッとしたそうです妻からも「あの子は会社の文化自体にも馴染めないってよく言っていたのよ。若いんだし、私たちの時代とは違うんだから、見守るしかないね」と言われたそうです。
自分が歩んできた価値観と息子世代の価値観の違いを具体的に意識するようになった篤史さん。雄大さんを一喝した日から親子の会話はほぼなくなっていましたが、今度の週末に雄大さんの話をゆっくり聞いてみようと思うようになったそうです。
[参考資料]
国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査」
リクルートマネジメントソリューションズ「働く人の本 音調査 2025」
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