夫は定年後に一変…「役に立たない」「頭が悪い」の毎日
「“逃げる”なんて考えたこともありませんでした。けれど、もう限界でした」
そう語るのは、都内在住の佐々木和子さん(仮名・82歳)です。和子さんは80代後半にして、ある決断をしました。それは、10年以上続いた“家庭内別居”を終わらせるためのものでした。
和子さんと夫(85歳)は50年以上連れ添ってきました。結婚当初は穏やかだったという夫。しかし、定年退職後、家にいる時間が増えると、徐々に小言や否定的な言動が目立つようになったといいます。
「“おまえは何も分かっていない”“話が通じない”“俺の金で暮らしてるくせに”――。毎日、そんな言葉を浴びせられました。暴力こそありませんでしたが、心がどんどんすり減っていったんです」
買い物や通院の相談をしても、「自分でやれ」「俺には関係ない」の一点張り。やがて、寝室も別になり、食事も会話もない“家庭内別居”の状態が始まりました。
「離婚して生活できるのかが怖くて、ずっと我慢してきました。でも、毎日怯えて暮らすような人生に意味があるのかと考えるようになったんです」
和子さんはある日、無料の法律相談に足を運びました。すると、弁護士から「正式な離婚ではなく、協議書を作って“同居しながらの生活ルール”を決めることもできる」と助言を受けたといいます。
「『離婚しなくても、心身の安全を守るための方法があると教えてもらって、目の前が開けた気がしました」
その後、専門家の支援を受けながら、金銭の分担・生活空間の完全分離・会話の最小限化などを明記した生活協議書を作成。公正証書にすることで、夫婦の共存は続けつつ、自分の心を守る道を選んだのです。
「早く誰かに相談すればよかった」…“心の離婚”を認める社会へ
「“夫を嫌いになったらいけない”“私さえ我慢すれば”って、ずっと思い込んでいました。でも、80歳を超えても、新しい一歩は踏み出せるんです」
そう語る和子さんは、今、地域のサロンに通ったり、近くの友人と食事に出かけたりと、自分の時間を取り戻し始めています。
高齢夫婦にとって、「離婚」や「別居」は、経済的・社会的ハードルが大きいのが現実です。しかし、制度や第三者の支援を活用すれば、心の距離を安全に取る方法は存在します。
誰かに相談することで、自分を守る選択肢が見えてくるかもしれません。老後の生活を我慢の連続にしないためにも、声を上げる勇気が求められています。
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