(※写真はイメージです/PIXTA)

資産はあるのに、現金が足りない――。こうした「資産リッチ・キャッシュプア」状態に陥る高齢者が増えています。特に、高級マンションや都心の不動産を所有している高齢世帯では、「見た目の豊かさ」と「実際の生活苦」のギャップが深刻化。今回は、都内のタワーマンションに暮らす70代と60代の未婚姉妹が直面した「想定外の現実」を紹介します。

「タワマンに住んでるのに、住民税が払えないんです」

東京都港区の駅近にそびえ立つタワーマンション。その一室に暮らす美枝さん(仮名・73歳)と妹の香代子さん(仮名・68歳)は、両親から相続した築20年の高層マンションで、20年以上静かに暮らしてきました。

 

「周りからは“優雅な老後ですね”なんて言われますけど、正直、家の価値が上がれば上がるほど、不安も増していったんです」

 

二人は未婚で子どももおらず、年金とわずかな配当金を頼りに生活しています。ですが、毎年の固定資産税と管理費だけで100万円を超え、住民税も含めた税負担が家計を圧迫し続けていました。

「口座にはもう、20万円しか残っていませんでした」

「去年の今ごろ、妹と二人で家計簿を見ながら唖然としました。これ、あと半年持つ?って」

 

生活費を切り詰め、旅行も外食も控えるようになったものの、固定費はどうにもなりません。資産評価額が高いため、税の減免や生活保護の対象にもならず、ついには区役所の窓口に相談に行くことになりました。

 

「住民税が払えないと言ったら、最初は“本当に困ってる方ですか?”って顔されました。でも、通帳を見せたら、すぐに対応が変わりましたね」

 

行政からは、住民税の分割納付や不動産担保型生活資金制度(厚生労働省管轄)の案内がありました。ただし後者は、原則として要介護認定を受けた高齢者が対象。姉妹には該当しませんでした。

 

「結局、“この家を何かに使うしかない”という話になって。不動産会社に相談して、賃貸に出すか、一部を売却する方向で動いています」

 

美枝さんは今、長年住み慣れた部屋の一角に間仕切りを作り、シェアハウスとして貸し出すことも検討中だといいます。

 

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