住み替えの周期は5年超10年以下が最適解
住み替え資産形成において、物件選び以上に難しいのが「買い替え」すなわち購入と売却を同時並行で進めていくことです。住み替え先となる物件を選ぶだけでなく、引っ越しなどのタイミングを見極めつつ、居住している物件の売却も並行して進めなくてはなりません。住宅ローンの整理も必要です。
まず考えるべきは、売却のタイミングです。住み替えの周期は、経済状況や家族構成によって変わりますが、私たちは5年から10年が目安と考えます。
その理由の一つは税制です。不動産を売却すると、売却益に不動産譲渡税が課せられます。
居住用不動産の譲渡所得課税額は、(譲渡所得−特別控除額)×税率となっており、売却で得た譲渡所得(成約価格−〈物件取得費 + 譲渡費用〉)から最大3,000万円まで適用できる特別控除額を差し引いて、その額に所定の税率を掛けて算出します。
また、税率は不動産の保有期間によって異なり、保有期間が5年以内であれば短期譲渡所得として約39%、保有期間が5年超になると長期譲渡所得として約20%がそれぞれ適用されます。つまり同じ物件を長く所有するほうが優遇されるのです。
例えば、1億5,000万円で購入した物件を7年後に諸経費を差し引いて1億9,000万円で売却した場合、売却益は4,000万円です。ここから特別控除の3,000万円を引いた1,000万円が課税対象となり、長期譲渡(5年超)なら税率約20%で譲渡税は約200万円です。
なお、建物部分は減価償却により帳簿上の取得価額が年々下がり、課税額が増える点に注意が必要です。仮に5年以内で売却していれば短期譲渡となり、税率は約39%で譲渡税は約390万円と倍近くになってしまいます。必ずしも3,000万円以上の利益を得られるわけではありませんが、もし3,000万円以上の利益が見込め、保有期間が5年近くであれば、少し待ってから売却するのが賢明です。
注意したいのは、所有期間5年の起算点は売却日ではなく、売却したその年の1月1日時点での所有期間で判断される点です。例えば、2019年4月に購入した物件を2024年8月に売却しても、2024年1月1日時点で5年を経過していないため、短期譲渡所得として扱われます。売却の際は、起算日に留意してください。
なお、特別控除は一度利用すると3年間は適用できません。したがって、売却時に特別控除を毎回適用させるのであれば、最低でも4年を空けて住み替えをする必要があります。また、転勤などで住まなくなった場合も特別控除は受けられません。ただし、住まなくなってから3年以内であれば適用可能です。
また、中古物件は、時間の経過とともに老朽化が目立つようになり、メンテナンスが必要になります。一般に、マンションでは定期的に大規模修繕が行われます。工事が売却タイミングに重なると、買い手の心証が悪くなる恐れがあります。
特に眺望が良い物件だと、工事の足場が視界を遮ることで、買い手にアピールできなくなります。修繕工事は半年ほど続くことが一般的であるため、物件を売却するなら、事前に修繕計画を把握しておくことが重要です。
