(※写真はイメージです/PIXTA)

中小企業の事業承継を強力に後押しする「事業承継税制の特例」。自社株式にかかる相続税・贈与税の納税を100%猶予するこの画期的な制度は、恒久的な措置ではありません。政府は適用期限を2027年12月末までとし、今後延長しない方針を明記しています。本稿では、川原大典氏の著書『銀行の提案を鵜呑みにしない 事業承継の疑問』(幻冬舎メディアコンサルティング)より、この特例措置を確実に活用するために期限までに何をすべきか、そして活用するうえで見落としてはならない注意点ついて詳しく解説します。

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制度活用における注意点

一方で、事業承継税制の特例活用における注意点もいくつか存在します。まず、複雑な手続きと長期的な管理が必要になること。制度利用後は定期的な報告義務があり、長期にわたる管理が必要です。具体的には、最初の5年間は、毎年、税務署への継続届出書の提出と都道府県への年次報告書の提出が必要です。5年経過したのちは、3年ごとに税務署へ継続届出書の提出が必要となります。この管理を怠ると、納税猶予が取り消されるリスクがあります。

 

また、要件違反のリスクにも注意が必要です。事業の継続や雇用の維持など、一定の要件を満たし続ける必要があります。例えば、後継者が代表者を退任したり、議決権割合が要件を下回ったりした場合、納税猶予が取り消される可能性があります。要件を満たさなくなった場合、猶予された税金を一括で納付する必要が生じます。これは企業にとって大きな負担となる可能性があります。

 

さらに、株価下落のリスクも考慮する必要があります。贈与後に株価が大幅に下落した場合、贈与時の高い株価で相続税が計算される可能性があります。これは、相続時に予想外の税負担が生じる可能性があることを意味します。例えば、贈与時に10億円だった株価が、相続時に5億円に下落していても、相続税の計算上は10億円として扱われてしまいます。

 

このように、事業承継税制の特例は大きなメリットがある一方で、注意すべき点も多く存在します。そのため、制度の活用を検討する際は、専門家のアドバイスを受けながら慎重に判断することが重要です。

 

 

川原 大典
みどり財産コンサルタンツ
代表取締役社長

 

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※本連載は、川原大典氏の著書『銀行の提案を鵜呑みにしない 事業承継の疑問』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・編集したものです。

銀行の提案を鵜呑みにしない 事業承継の疑問

銀行の提案を鵜呑みにしない 事業承継の疑問

川原 大典

幻冬舎メディアコンサルティング

長年にわたって情熱を注ぎこみ、経営してきた会社を次の世代にいかにして承継するか――。事業承継は企業経営者にとって避けては通れない大きなテーマの一つです。事業承継を進めるにあたっては、会計・税務・法務といった多分…

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