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銀行の提案だから大丈夫という思いこみを捨てる
人が物事を判断するとき、必ずといっていいほど何らかのバイアスがかかっています。事業承継に関する判断をする際も例外ではありません。
なんだかんだいっても、ほとんどの経営者にとって銀行をはじめとする金融機関への信用や安心感は大きなものがあります。メインバンクは創業以来の付き合いということも珍しくないでしょう。もともと信用があり、かつ、長期にわたって取引関係のある銀行から提案されるわけですから、自社にとって最適な事業承継提案だろうと思うのも自然なことです。
しかし、これがある種のバイアスといえます。前述のとおり、事業承継は銀行にとって融資拡大のビジネスチャンスであり、自行の業績を上げるために提案しているのです。銀行が自行の儲けのために事業承継提案を行うことが悪いわけではありませんが、無条件に信用するのはリスクがあります。経営者は、銀行の言うことを鵜呑みにするのではなく、「自社にとって本当に有利で最適な提案か」とよく検討することが必要です。
もう一つ大きなバイアスがかかる場合があります。外部コンサルタントの権威に対する盲目的な信頼です。
銀行は往々にして外部コンサルタントと連携して事業承継の提案を行います。メガバンクや地方銀行の本部の人間が、東京のコンサルタントを連れてくるケースが多く見られます。
「東京から専門家が来てくれた」「大手コンサルティング会社の人が提案してくれている」ということに価値を感じてしまい、「こんなにすごい専門家が言うのだから間違いないだろう」と思いこみ、提案内容を素直に受け入れてしまうことが少なくありません。
銀行と銀行が連れてきた外部コンサルタントの提案を見ると、ほとんどが持株会社スキームであることに気付きます。会社の状況や経営者の希望はさまざまであるにもかかわらず、提案の内容はみな同じなのです。このたった一つの提案を自社にとって最適なものと思い込んでしまうと、本当に最適な事業承継の方法を見つける機会を失ってしまいます。
さらに、経営者自身の税財務知識の不足も銀行を信じ込んでしまう原因になっています。税務や財務に関する専門的な知識を十分に持ち合わせていない中小企業経営者は少なくありません。法人税や所得税のことについてはなんとなく分かっても、相続税に詳しい経営者は極めてまれです。
知識が不足しているので、銀行や外部コンサルタントの提案が正しいか否か、自社にとって最適かどうかを判断できず、相手の言うことを信用するしかありません。また、自分で一から調べることに心理的なハードルもあるため、ほかの選択肢を検討するという思考にもなりにくいという面もあります。結果として、自社にとって最適とはいえない事業承継対策を、よく分からないまま、勧められるがまま選んでしまうのです。
経営者は、事業承継対策を検討するに当たり、「銀行に対する過信」とその銀行が連れてきた外部コンサルタントの「権威に対する盲目的な信頼」というバイアスをコントロールして、自社に最適な事業承継対策を講じてくれるアドバイザーを見つける必要があります。
