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高齢者向け住宅制度という選択肢
田村さん夫妻のように「自宅売却→賃貸へ」という流れを選ぶ高齢者は、近年増加傾向にあります。背景には、高齢者が安心して暮らせる公的な住宅制度の存在があります。
たとえば、UR賃貸住宅ではバリアフリー対応が進んでおり、「高齢者向け優良賃貸住宅(高優賃)」として整備されている物件もあります。高齢者向けに家賃の一部が補助されることもあり、生活の安定につながります。
また、自治体によっては「見守りサービス」や「緊急通報システム」が付帯する住宅も提供されており、自宅に近い感覚で安心して暮らせる選択肢が広がっています。
持ち家があるから老後は安心、というのはよくある誤解です。修繕費や固定資産税などの“見えにくい固定費”は思った以上に家計を圧迫します。
特に医療・介護といった“タイミングが読めない支出”に備えるには、柔軟に使える現金を多く持っておくことが大切です。住まいを現金化し、賃貸に住み替えるという選択も視野に入れてよいでしょう。
将来の「介護」を見据えるために
現金資産を確保しておくことは、将来の介護に備えるうえでも非常に重要です。
たとえば、「特別養護老人ホーム(特養)」は所得に応じた費用負担で入居できる公的施設ですが、人気が高く、地域によっては数年単位の待機が必要なこともあります。
一方で、比較的入りやすい「介護付き有料老人ホーム」は、入居一時金や月額利用料が高額になる傾向があり、数百万円〜数千万円単位の資金が必要となる場合もあります。
また、要介護認定を受ければ、公的介護保険を利用して、訪問介護(ヘルパー)やデイサービス、ショートステイなどの在宅介護サービスを受けることも可能です。こうした制度を活用しつつ、自分たちの生活スタイルに合った選択肢を見つけるためにも、「自由に使えるお金」があるかどうかは大きなカギになります。
「今の住まいはバリアフリーで快適ですし、駅にも病院にも近くて便利。持ち家にしがみついていたら、逆にストレスが増えていたかもしれません」(悦子さん)
「たしかに家を手放すのは寂しさもありました。でも、“安心のための決断”でした。老後は、感情よりも現実を見たほうがいいのかもしれません」(和夫さん)
「年金月20万円」「貯金2,000万円」という条件だけを見れば、“老後は安泰”と思う方も多いかもしれません。
しかし、老後の暮らしを脅かすのは、大きな一撃ではなく、じわじわと効いてくる想定外の積み重ねです。住宅の維持費、医療費、家族との距離、そして将来の介護──。
本当に大切なのは、「どこで暮らすか」よりも、「どう生きるか」を見極めることです。そしてその判断の裏には、介護保険や高齢者住宅といった制度を正しく知り、活かす力も欠かせません。
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