遺族年金は月8万円…想像以上の少なさに絶句
夫が亡くなったら遺族年金を受け取れる。道子さんもそのことは薄っすら知っていました。しかし、その金額がどれぐらいになるかを計算したこと、夫と話したことは一度もありませんでした。
年金事務所で確認した結果、道子さんが受け取れる年金は、本人分が月に約6万円、夫の遺族厚生年金が月に約8万円(振替加算含む)。合計で14万円ほどにしかならないことが判明しました。
マンションの住宅ローンは夫がかけていた団体信用生命保険のおかげで完済となりましたが、管理費や修繕積立金、光熱費や食費、今後かかる医療・介護費を考えると、貯金300万円、年金月14万円は決して余裕があるとは言えない金額です。
道子さんは、娘の動揺で事態の深刻さを実感。長い人生で初めて、自分の生活について不安を抱えることになったのです。夫頼りの幸せな人生から急転直下、今すぐに考えなければならないほど大きな不安です。
「働くしかない」そう思ったが
このままでは暮らしていけない、そう思った道子さん。娘は心配してくれましたが、道子さんにとって一番心苦しいのが、娘夫婦に負担をかけることでした。
「働くところがないか探してみるから大丈夫」
道子さんは仕事を探し始めました。初めてのハローワーク、初めての履歴書作成。スーパーのレジや清掃の仕事など、未経験でも応募できる求人に何度も面接に行きました。
しかし、67歳という年齢に加えて、人生のほとんどが専業主婦という経歴。なかなか採用されません。ようやく採用されたスーパーでは、研修の段階で商品スキャンや金銭のやりとりの複雑さに戸惑い、社員から「ちょっと厳しいかもしれません、品出しをしてもらうにしても、体力的にどうでしょうか……」と告げられました。その日の帰り道、道子さんは悔しさと情けなさで涙が止まらなかったといいます。
清掃の仕事も試しましたが、「私にはどうしてもできない」。働いて稼ぐことの厳しさに直面したのでした。
