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毛皮の廃止、フカヒレ使用禁止…生物へも高まる「包摂」の意識
次に「生物多様性」だが、ラグジュアリーサファリロッジにおいては、野生動物が生息する自然と共存するリゾートが、観光産業を通して生物多様性の保持に寄与するということを意味するが、ファッションの分野においてもこの潮流はある。
たとえば、毛皮を使用しない「ファーフリー」がそうだ。前掲書の『新・ラグジュアリー』では、次のように紹介している。
2021年9月、ケリンググループは傘下の全ブランドで毛皮を使わないことを宣言しました。
毛皮に関しては、一部の極寒地域にとってはオーガニックな必需品でもあり、一概に使用禁止とすることに対しては疑問を挟みたいところですが、企業としての環境保護の姿勢をより鮮明にしたいということでしょう。
防寒ウェアが主力商品であるモンクレールも、2022年中にファーの調達を中止することを決定。2023―24年秋冬コレクションがファーを使用する最後のコレクションとなります。
豪華なファーがブランドの特色でもあったドルチェ&ガッバーナも、2022年以降、動物の毛皮を廃止することを宣言。一方で、毛皮加工職人の仕事やスキルを次世代に受け継いでいくため、リサイクル素材などを使用したフェイクファーで代替し、職人たちとのコラボレーションを継続していく方針を打ち出しました。
「生物多様性」に対する意識は、食の世界にも影響を与えている。そのひとつがフカヒレだ。サメの尾びれや背びれを乾燥させた中国料理の高級食材として知られる。問題視されるようになったのは、フカヒレの材料となる尾びれだけを切り取り、再び海に戻す「シャークフィニング」と呼ばれる残酷なサメ漁だった。ひれを失ったサメは泳ぐことができず、そのまま死んでしまう。
2021年、EU離脱後のイギリスが動物愛護の取り組み「アクションプラン・フォー・アニマル・ウェルフェア」の提起からフカヒレの輸出入を禁止する法律を制定したのがきっかけとなり、EU、アメリカなどの各国が追随した。これに伴い、世界のラグジュアリーホテルチェーンでフカヒレを使用しない取り決めが広がった。
フカヒレの輸出入を禁止していない日本においても、現在、多くの外資系ホテルでフカヒレは料理に使用されていない。
山口 由美
作家
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