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「排他」から「包摂」へ…変化する「ラグジュアリー」の意味
サステナビリティに対する意識の高まりのみならず、ラグジュアリーの世界では、ラグジュアリーそのものの捉え方にも変化が生じている。旧型ラグジュアリーから新しいラグジュアリーへの転換である。その動きは、ホスピタリティ産業にとどまらない。
「ラグジュアリー」とは、一般に「豪華な」「贅沢な」という意味で用いられるが、その本質的な意味は、時代と共に変化してきた。ファッション業界を中心にラグジュアリーの変化を論じた『新・ラグジュアリー 文化が生み出す経済10の講義』(安西洋之・中野香織、クロスメディア・パブリッシング、2022年)は次のように指摘する。
古代から時代とともに「ラグジュアリー」の意味は常に変わってきたのです。
まずは王権や宗教的権力を示すためのラグジュアリーがあり、産業革命後は新興ブルジョワジーの権威付けのためのラグジュアリーがあった。20世紀後半からは、欧州以外の地域での欧州文化への憧れや自慢の対象として、ラグジュアリーは存在感を出してきました。
そして現在、21世紀も20年以上を経て、ラグジュアリーにはさらなる変化が見えています。より公平で透明性の高いビジネスモデルを率先して実現しようとしているのです。
従来のエリート的な「排他」から民主的な「包摂」へと性格を変え、新しい時代に適合した世界の可視化がラグジュアリー領域に期待されています。
「排他」から「包摂」へ、という変化のキーワードは、ラグジュアリーリゾートのあり方として、私自身も2000年代初め頃に実感したことがある。
ホテルを「鉄条網」で囲うカリブ海、開放的なバリ島
それはカリブ海のとある島嶼国(とうしょこく)のリゾートに行った時のことだった。滞在したラグジュアリーホテルの周囲が鉄条網で囲われていたのだ。聞けば、周囲は治安が悪いからとのことだった。
カリブ海は、北米マーケットの一大リゾートエリアとして発展してきた。だが、リゾート開発は、経済格差のある地元を「排他」し、観光客だけを囲い込んだ「楽園」とすることで進められたものが多かった。
鉄条網は、まさにその象徴だったのだろう。2000年代初めに勃興していたバリ島やプーケットなどのアジアンリゾートでは見られない状況だっただけに、少なからずショックを受けたことをよく覚えている。
アジアンリゾートが欧米マーケットにムーブメントをおこした背景には、「排他」から「包摂」へ、という変化のキーワードをいち早く体現していたからかもしれない。
「包摂」とは、異なる意見や立場、文化や価値観などを受け入れ、調和を図ることを指す。その考え方を象徴するひとつが、ローカル文化やコミュニティとどうかかわっていくか、ということだろう。
労働力の提供としての地元の人たちの雇用、エキゾティシズムの象徴としてのローカル文化の提供は以前からあった。だが、「公平で透明性のあるビジネスモデル」ではなかった。
地元のコミュニティとリゾートが公平な関係を築き、リゾートで上げる収益をコミュニティに適正に還元していくことが、ホスピタリティ産業における新しいラグジュアリーのあり方なのだと思う。
シンギータ※がプラットフォームにあげた「コミュニティ」が、まさにこれである。
