「自分こそが正義」…きょうだい間の認識の差が争いの火種に
――きょうだい間で相続争いが起きるのは避けたいですね。親から離れて暮らしている方が、ひきこもっている側に対して譲歩するケースもあるのでしょうか?
譲歩するケースもあるでしょう。ですが、一つ確実に言えるのは、当人がそのとき金銭的に困っていれば、自分の取り分を強く主張するということ。独立していても、生活に余裕があるとは限りません。たとえば、我が子の進学などで大きな出費が重なっているときなど、家族を持っている人の方が厳しい生活をしていることもありますから。
『実家がしんどい!こちら「身内トラブル」のご相談窓口です』(三笠書房)でも書いたのですが、相続では本人だけでなく配偶者(妻・夫)が介入してくるケースもあります。配偶者が「法律で決まっているなら、きっちり取り分をもらおう」と主張することもあり、きょうだい仲が良くても争いが起きてしまうことも。
さらに、それぞれの認識にズレがあることも争いの原因になります。たとえば、姉は「妹は実家で楽をしている」と思い、妹は「姉は自由で、自分は親の面倒を見るために犠牲になっている」と感じている……。このように、双方で解釈が食い違うことが多々あります。
「親の面倒を見た」「家族のために犠牲になった」、だから「自分が多く相続するべき」といった主観的な評価がぶつかり合い、感情的な争いになってしまうことは少なくありません。“自分こそが正義”だと信じて疑わないのが難しいところです。
――家族だけで解決しなそうであれば、専門家に介入してもらうべきですか?
争いが顕在化する前に、弁護士や税理士などに相談するのも一つの方法ですね。たとえば資産が家だけしかなく、その家を「一緒に暮らしていた子どもに渡したい」と親が考えるなら、「代償分割」という手法を検討できます。また、事前に生命保険を使って、同居していない子どもにも公平な金額を残すという対応も可能です。こうした案は専門家でなければ出てこないこともあるでしょう。
無料で利用できる法テラスなどの支援も利用する方法もあります。注意したいのは、「知人に紹介された専門家」に頼るケースです。断りづらく、相性が合わないまま依頼することにならないよう、ネットなども活用して幅広く自分に合った専門家を探すことが大切です。

