検索
ゴールドオンライン新書最新刊、Amazonにて好評発売中！
『司法書士が全部教える 「一人一法人」時代の会社の作り方【基本編】』
加陽麻里布(著)＋ゴールドオンライン (編集)
『富裕層が知っておきたい世界の税制【カリブ海、欧州編】』
矢内一好 (著)＋ゴールドオンライン (編集)
『司法書士が全部教える 「一人一法人」時代の会社の作り方【実践編】』
加陽麻里布(著)＋ゴールドオンライン (編集)
シリーズ既刊本も好評発売中 → 紹介ページはコチラ！
不仲な夫と我慢して連れ添った妻
斉藤裕子さん（仮名／60歳）は、夫の保さん（仮名／65歳）と結婚38年。しかし、子どもが独立して家を出たころから夫婦の会話はなくなり、15年以上も家庭内別居の状態が続いていました。
専業主婦として家庭に入っていた裕子さんには、特別なスキルや収入はありません。「いま離婚しても生活できない」──その思いから、不仲でも我慢して結婚生活を続けていました。大手企業に勤め、順調に出世コースを歩んできた夫。その将来の退職金こそが、裕子さんにとって唯一の希望の光だったのです。
夫婦といっても生活は別々。ここ15年ものあいだ、裕子さんは家事も自分の分だけをこなし、家の掃除はしても夫の世話は一切しませんでした。そんな生活のなかで、裕子さんはある計画を企てていました。「夫が定年したら、退職金の半分を財産分与で手に入れ、きっぱり離婚する。そして、長年交際してきた不倫相手の男性と再婚し、悠々自適のセカンドライフを送る」。それが彼女の描いたシナリオでした。
その日のために、裕子さんは不倫の痕跡を残さないよう徹底。連絡手段は別に用意し、デートの支払いは現金にするなど、細心の注意を払っていました。そして「これくらいの贅沢は許されるはず」と、夫の稼ぎを自分の美容代や旅行費、そして計画の最終目的にいる男性との交際費に充てることに、もはや罪悪感はありませんでした。
そして、いよいよ夫の定年退職の日。退職金3,500万円が振り込まれたのを確認し、裕子さんは心の中でガッツポーズをしました。「計画どおり。これで私の第二の人生が始まる」と胸を高鳴らせていた、まさにその矢先、神妙な面持ちの保さんから話を持ち掛けられたのです。
一枚上手な夫からの申し出
「離婚したい」
突然の言葉に一瞬驚いたものの、裕子さんは内心「しめた」と思いました。自分から切り出す手間が省けたうえに、不倫の証拠は何一つ残していないはず。法律上、退職金の半分、1,750万円は自分のものになる──。そう確信して、すぐさま財産分与を求めました。
しかし、保さんのほうが一枚上手でした。彼は冷静にこう続けます。
「15年間、家庭内でなにひとつ協力せず、専業主婦でありながら最低限の家事もせず、自分の楽しみのために金を使ってきた。そんなあなたに、これ以上私の人生を捧げるつもりはない」
そして、保さんがテーブルに並べたのは、裕子さんが気づかぬうちに記録し続けていた数々の証拠でした。妻の浪費を示すクレジットカードの利用履歴、そして探偵を雇って撮影させた、不倫相手と密会する写真の数々。裕子さんが完璧に隠したはずの企ては、すべて夫に筒抜けだったのです。
弁護士を立てた離婚協議は調停に持ち込まれました。裕子さんの企てと長年の不貞行為が考慮された結果、彼女が得たのは、夫の厚生年金の半分（年金分割）と、当面の生活資金としての1,000万円のみ。
さらに、不貞の慰謝料として保さんに300万円を支払うこととなり、弁護士費用などを差し引くと、裕子さんの手元に最終的に残ったのは、わずか600万円程度でした。
夢みていた悠々自適の老後は、わずかな資金を切り崩しながらパート勤務で生計を立てる厳しい現実へと変わってしまったのです。
