景況感は現状・先行きともに2ヵ月連続で改善、家計動向・企業動向とも改善
6月の「景気ウォッチャー調査」で、現状判断DI(季節調整値)は前月差0.6ポイント上昇の45.0になりました。2ヵ月連続の上昇です。南関東のコンビニ店長の「3ヵ月前と比べると、気温が上がり、特に今年は梅雨らしい梅雨ではなく、夜は気温が高い日も多いため、夜間の売上、来客数が伸びている。物価上昇もあり、前年と比べるとやや下がってはいるものの、3ヵ月前よりは良くなっている」というコメントに代表されるように、暑さによる夏物消費の効果で家計動向関連DIは44.4と前月から0.3ポイント上昇しました。
企業動向関連DIは1.9ポイント上昇し、46.1になりました。製造業が1.1ポイント、非製造業が2.4ポイントそれぞれ上昇しました。東海の一般機械器具製造業・営業担当は「米国の関税施策で設備投資を様子見している客は多いが、もう待てないという雰囲気もあり、北米を中心に半導体関連の受注増加に備えて各代理店が在庫を増やす動きがある」とコメントしました。
先行き判断DI(季節調整値)は、前月差1.1ポイント上昇し、45.9になりました。こちらも2ヵ月連続の上昇です。
なお、原数値でみると、現状判断DIは前月差0.3ポイント上昇の45.1となり、先行き判断DIは前月差0.8ポイント上昇の46.9になりました。
業種ごとの現状判断DIをみると、アイスや飲料、エアコンなどの夏物消費増の効果が出ていると思われるコンビニと家電量販店が景気判断の分岐点の50を超えています。
沖縄の景況感、突出続く…新規レジャー施設への期待も
地域別にみた6月の現状判断DIでは沖縄だけが56.3と4・5月に続き3ヵ月連続で景気判断の分岐点50超になりました。一方、沖縄の先行き判断DIは61.6と24年1月60.1以来の60台になりました。21年9月以降3年10ヵ月連続50超が続いています。「大型レジャー施設開業に伴う7月以降の観光客の増加による土産の売上増加が見込まれる」という沖縄の一般小売店[土産]の営業部長のジャングリア沖縄の開業に期待するコメントがありました。
物価高への懸念は続くも、景況感へのマイナス寄与は薄らぐ
6月「価格or物価」関連現状判断DIは40.4で5月から3.9ポイント上昇し、24年12月の42.8以来の40台になりました。6月の現状判断コメント数は261名と2ヵ月連続減少し、今年最少です。
トランプ関税の悪影響に一服感、関連DIは2ヵ月連続で改善
6月もトランプ大統領の関税に振り回されましたが、悪影響は幾分和らいだ感じがします。5月まで「関税」関連DIは現状、先行きともに3ヵ月連続30台の低水準でしたが、6月は各々41.1、43.0と40台に。4月のコメント数は現状判断104名、先行き判断が249名とピークでしたが、2ヵ月連続減少。6月は現状判断45名、先行き判断は115名になりました。
「外国人orインバウンド」関連現状判断DIは悪化、7月災害の風説も影響
4月まで「外国人orインバウンド」関連の現状判断DI、同先行き判断DIとも50超で景況感の押し上げ要因でしたが、5月「外国人orインバウンド」関連の現状判断DIは49.4、同先行き判断DIは50.0。両DIとも景気判断の分岐点を上回ることができなくなりました。新型コロナウイルスの影響が出ていた22年2月「外国人orインバウンド」関連の現状判断DI31.3、同先行き判断DI50.0以来、極めて異例の事態でした。
6月は「外国人orインバウンド」関連先行き判断DIは50.8に0.8ポイント上昇し50超に戻ったものの、同現状判断DIは44.2と5.2ポイント低下、2ヵ月連続の40台になりました。7月に地震が起こるとの風説が影響したようです。7月地震の風説のコメントは全国的にみられます。
たとえば「物価高と大阪・関西万博の影響で、国内外からのグループ客の減少が目立っている。またインバウンドについては、7月に地震が起こるとの風説が流れていることで、香港、台湾などのグループ客のキャンセルが相次ぎ、大きな影響が生じている。参議院選挙を控え、夏場の国内客の予約が鈍化していることもマイナスである」と北海道の観光型ホテル・経営者がコメント。「7月に災害が起きる噂が原因かもしれないが、インバウンドが大幅に減少している」という、九州の居酒屋・経営者のコメントなどが挙げられます。
万博効果は持続、関連DIは現状・先行きとも50超えを維持
6月の「万博」関連現状判断DIは50.6と5月より3.2ポイント鈍化しましたが、コメント数は43名で最高になりました。6月の「万博」関連先行き判断DIは56.0で5月から2.5ポイント上昇しました。会期が半ば近くになったこともあり、コメント数は42名で最高だった4月の60名から2ヵ月連続で低下しました。「万博」関連DIは現状判断、先行き判断とも景気判断の分岐点の50を上回る状況は続いています。
停戦合意で中東情勢安定化するも懸念するコメント数が増加
6月調査の調査期間は6月25日~30日ですが、その直前、トランプ米大統領が日本時間22日午前、米軍がイラン国内3ヵ所の核施設を空爆したと発表。また、トランプ大統領がイスラエルとイランそれぞれが順次戦闘を停止し、日本時間25日午後1時には戦闘が終結するとした停戦合意を日本時間24日に発表しました。
中東関連で大きな動きがあったため、6月調査では、中東、イスラエル、イランに関するコメントがにわかに増えました。中東情勢を懸念するコメントが多く、全体のDIに対しマイナス寄与となっています。
※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。
宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)
三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。
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