経営者死去、70代妻の預金残高「2億円」…税務署が目を光らせる「家族間での資産移転」の問題【税理士が警告】

経営者死去、70代妻の預金残高「2億円」…税務署が目を光らせる「家族間での資産移転」の問題【税理士が警告】
(※写真はイメージです/PIXTA)

経営者は、お金の管理に十分な注意を払うことが重要です。とくに家族の口座へ安易にお金を移すのは「名義預金」となり、税務署から厳しい追及を受けることになります。※本記事は、税理士・清野宏之著『社長の資産を守る本』(セルバ出版)から抜粋・再編集したものです。

「名義預金」に注意

◆名義預金とは、実際にお金を出した人と口座の名義が違う預金

銀行口座の管理については、本当に気をつけてほしいことがあります。それは、家族の口座へ安易にお金を移してしまうことは、厳に慎みましょう、ということです。

 

とくに、家族間でのお金の移転は注意しましょう。

 

いわゆる「名義預金」の問題になることがあるからです。

 

名義預金は、「実際にお金を出した人と口座の名義人が違う預金」を言います。

 

◆法人成り前の個人事業主時代の、家族間の資金移動も要注意

とくに注意が必要なのは、法人成りする以前に個人事業を営んでいたケースでしょう。

 

なぜかと言うと、事業をしているときに、家族間でお金を動かしていた人が多かったからです。

 

当の本人にしてみれば、いまとなっては数十年も昔の話であり、法人化しているので、

 

「そんな前の話なんか、わかんないよ」

 

と言いたくなるでしょう。

 

でも、ご家族にとても大きなお金が動いた事実は明白です。

 

たとえば、元社長が亡くなったときの預金残高が5,000万円あって、これで相続税の申告をしました。

 

ところが、奥様の預金残高は2億円あった。そして、お子様の預金残高は1億円あった。こんなケースです。

 

そのようなとき、「奥様は当時、その個人事業で働いていたから、残高が多くても何の不思議はない」と主張しても、昭和30年代くらいの給与水準を見ると、公務員でも1〜2万円です。

 

どれだけ積み上げても、それだけの残高にはならないでしょう。

 

税務署は、名義預金を相続税逃れのためと見做しているので、税務調査では厳しく追及されます。

 

調査に入った税務署員に指摘されて、

 

「そんなに疑わしいなら、計算してみてください」

 

と言うのですが、やはり計算をしても、そこまでの残高にはなりません。

 

たしかに、給与の手取り額500万円を30年以上積み上げることができたなら、残高が2億円近くに達することもあり得ます。

 

でも、「奥様のお金はまったく使わず、社長のお金だけで生活して、これだけ積み上がったんだ」という主張は正当性があるように聞こえますが、いま80歳になる奥様が70歳までに2億円を貯めるのは、非現実的な話と言わざるを得ません。

 

根拠があって、説明できるものなら、もちろん大丈夫です。

 

決して奥様やお子様の預金残高が多くてはいけないと言っているわけではありません。わたしが言いたいのは、

 

「常にその説明ができるようにしていてくださいね」

 

ということです。

 

◆悪質と認定されれば、重加算税の対象に

以前であれば、ご主人様が奥様やお子様の名義で口座をつくることができました。ひとり300~350万円の非課税枠があった時代もあり、いろいろな銀行に、本人以外の名義の口座をどんどんつくってしまった人もいます。

 

本人が知らないところで口座がつくられて、お金が積み上げられていく。

 

場合によっては、そのお金を入金していたのは、ご主人様に依頼された奥様やお子様であることも…。

 

そうすると、税務署から

 

「あなたたちも、所得移転を手伝っていましたね。これは重加算の対象ですよ。だって、自分のお金ではないと知っていて、行っていましたよね?」

 

とも言われかねません。

 

わたしも、お客様が理不尽なことを言われれば、しっかりと主張します。

 

ラチがあかないときは、税務署も引くことになりますが、そもそも痛くもないお腹を探られるのは嫌ですよね。

 

また、

 

「お金を家族に移しても、税務署にはわからないだろう…」

 

と思っている人は多いのですが、そんなことはありません。

 

税務署は、調べるときは周到に調べるものです。

 

名義預金と認定されかねないケースをつくってしまわないよう、注意が必要なことを覚えておきましょう。

 

 

清野 宏之
税理士・行政書士、清野宏之税理士事務所所長

 

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※本記事は、税理士・清野宏之著『社長の資産を守る本』(セルバ出版)から抜粋・再編集したものです。

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