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税務署の“網”に引っかかった理由
通常、相続財産が1億円数千万円程度の家庭を、税務署が調査対象にすることはあまりありません。にもかかわらず、この家族が税務調査の対象に選ばれたのは、近年、海外との情報共有が進んだことが背景にあります。その一つがOECD(経済協力開発機構)が策定したCRS(Common Reporting Standard:共通報告基準)で、日本を含む多くの国が導入しています。
このCRSは、外国の金融機関等を利用した国際的な脱税や租税回避に対処するため、各国の税務当局が非居住者の金融口座情報を自動的に交換するための国際的な枠組みです。そのため日本の税務当局には、各国から日本居住者の海外金融口座情報が自動的に送られてきます。今回の税務調査は、送られてきた海外口座情報のローマ字の名前が、この家族の名前と一致したことが理由と思われます。
税務署はこのデータを活用して“怪しい”と思われる事案に狙いを定めて税務調査を始めていると思われます。つまり、財産の規模だけで調査対象が選ばれるわけではなくなっているのです。
中垣 健
中垣健税理士事務所所長
おかざき相続税・贈与税相談プラザ代表
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