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「娘が主導でやっていました」の一言が突破口に
後日、調査官が相続人の自宅に出向き、税理士である筆者の立ち会いのもと、聞き取り調査を行いました。その日は、相続人である妻への聞き取り。初めはどのように資産形成を行っていたかといった質問をしていき、そこから筆者が「海外に資産があるのではないか、といわれたのですが」と話を向けました。
すると、「娘が主導してやっていました」という言葉がポロッと出てきたのです。筆者自身も初耳でした。海外資産の有無に関しては、申告書を作成する際に質問しているのですが、そのときにはそういった話が出てこなかったからです。
調査官が「それはいつごろですか? どんな経緯で?」と根掘り葉掘り聞いていくなかで、15年ほど前の古い通帳が出てきて、当時の出入金の記録が残っていました。まずはこれを当たって、海外の資産が本当に妻の財産から出ているかどうかを調べることになりました。
調査官はその通帳のコピーを取って引き上げました。結局、税務署も4人に海外資産があるところまではわかったものの、そのお金の出どころがどこなのかという、核心の部分まではつかんでいなかったのです。
被相続人が中小企業の経営者で、生前の年収が2,000万円という高額だった割に、相続財産が約1億3,000万円という少ない額だった理由についても、妻によると、「本人はお酒や旅行が好きで散財してきたため、あまり残らなかったのだ」とのことでした。
母・娘2人からの逆襲戦
次回の税務調査には、妻と2人の娘が同席しました。その場で3人それぞれが自分名義の通帳を持参し、「海外資産については、私たち自身で資金を出して運用し、その運用益も自分たちで受け取っています」と説明しました。
実際、10数年前に妻が香港の口座に送金している記録があり、その後に運用益と思われるお金が振り込まれていました。その送金の原資が誰のお金なのかはわかりません。しかし、少なくとも妻自身が送金していたことから、3人の子どもたちも同様に自分たちのお金で海外資産を運用していることが推測されます。
そのうえで、「これ以上のことは私たちにはわからないので、名義預金の疑いがあるというのなら、そちらで調べて立証してください」と、逆に調査官にその後の対応を委ねました。調査官も全容を把握しきれず、結果的には強引に納得させたような形で税務調査は終了。
もちろん、亡くなった父親のお金が使われていた可能性もゼロではありません。しかし、それを立証できるだけの証拠を税務署側もみつけることができませんでした。税務署としてもその原資が不明確である以上、それ以上の追及は困難と判断したのでしょう。
