「アメリカ不動産での節税」個人では不可となったが…
2020年の税制改正で、個人の「所得税・住民税の節税」が封じ込められました。
この税制改正の内容は「海外不動産に限り損益通算を不可とする」というものです。アメリカ不動産を活用した節税対策は、“減価償却により大きな損失が生まれる不動産”と“給与や報酬などの所得”を相殺することで節税ができるというスキームでしたが、それができなくなってしまったのです。
とは言え、これはあくまで個人に対しての改正であり、法人での海外不動産の取り扱いについては言及されていません。つまり法人でアメリカ不動産を持てば、いまでも節税効果を生むことが可能なのです。
しかし個人と法人での節税効果には大きな違いがあります。
個人の場合、短期譲渡期間と長期譲渡期間によって税率差があり、長期譲渡期間に不動産を譲渡すれば不動産譲渡税は約20%となります。所得税の税率が高い人であればあるほど所得税率と不動産譲渡税の税率差が大きくなり、節税効果は大きくなります。
一方法人の場合、いつ不動産を譲渡しようと税率は変わりません。つまり、単年度では法人税の節税効果はあるものの、長い目で見ると法人税の繰り延べしかできないのです。にも関わらず、いま、アメリカ不動産を個人から法人へ名義変更するニーズは増すばかりです。
背景としては、生命保険やオペレーティングリースといったいままで法人税節税対策でよく活用されていた商品が激減していることと、アメリカ不動産市場が好調であることが挙げられます。
特にアメリカ不動産の不動産価格は短期的に増減があるものの、長期的に見れば右肩上がりです。個人から法人へ名義変更することで、長期的にアメリカ不動産に投資に取り組むことができ、キャピタルゲインを得る可能性が高まるというワケです。
アメリカ不動産「法人への名義変更」の思わぬリスク
アメリカ不動産を個人から法人へ名義変更することにはリスクが伴います。リスクを知らずに名義変更をしてしまうと、アメリカ不動産が原因で本業の法人が傾いてしまうかもしれません。
アメリカ不動産を法人で持つことの最大のリスクは、アメリカ不動産の権利義務がすべて法人に帰属するということです。収益を上げる権利もありますが、アメリカ不動産で起こることすべてに義務があります。例えば、持っているアメリカ不動産が原因で予期せぬことや事故が起こった場合、法人が訴えられたり、損害賠償請求を受けたりすることになります。
このようなリスクを回避するためにも、問題のあるアメリカ不動産の名義変更はオススメできません。入居者の属性がよく、問題が起こりづらいアメリカ不動産であればリスクは抑えられるでしょう。
また、日本で個人の確定申告よりも法人の決算の方が税理士に支払う報酬が高くなることと同様、アメリカでもCPAに支払う報酬は高くなります。事前にCPAへ報酬の確認が必要です。