ゴールドオンライン新書最新刊、Amazonにて好評発売中!
『司法書士が全部教える 「一人一法人」時代の会社の作り方【基本編】』
加陽麻里布(著)+ゴールドオンライン (編集)
『富裕層が知っておきたい世界の税制【カリブ海、欧州編】』
矢内一好 (著)+ゴールドオンライン (編集)
『司法書士が全部教える 「一人一法人」時代の会社の作り方【実践編】』
加陽麻里布(著)+ゴールドオンライン (編集)
シリーズ既刊本も好評発売中 → 紹介ページはコチラ!
裁判所の判断
実母A氏と兄B氏のあいだの相続財産分割審判の訴訟に家庭裁判所が判決を下したのは、2020年のこと。
裁判官は、父母が離婚をしたとしても、子どもを養育する責任があるとし、実母A氏が家出をしてから12年ものあいだ、ク・ハラ氏に会おうともしなかったことなどを考慮して、B氏側に20%の寄与分を認定。全体から20%を差し引いた残りの80%を両親で半分に分け合い、最終的に実母A氏に40%、父親から相続権を譲り受けたB氏に60%という判決を下した。
この結果に、B氏の弁護士は「このような事情を十分に尊重したとしても立法措置がなくては、子どもを捨てた父母の相続権を完全に失わせることは不可能だというのは残念だ」と述べ、国民に法改正への支持を訴えた。
急増する遺産分割訴訟
実は、このような相続をめぐる紛争は韓国で増加傾向にある。司法統計によると、2022年に韓国の裁判所に受け付けられた相続財産の分割に関する処分事件は、2,776件。2014年の771件に比べると、8年のあいだに3.6倍に急増している。
そして2024年4月25日、韓国の憲法裁判所は、ク・ハラ氏の遺族らの訴訟の影響を受け、ある画期的な判決を下す。
それは、遺言書で相続させる相手や内容を決めていたとしても、法定相続人が相続財産の返還を請求ができる権利(遺留分)について、兄弟姉妹に遺留分を認める法律は憲法に違反すると判断し、即時失効を決定。さらに、両親や子どもであっても、扶養の義務を果たしていなかったり、精神的・肉体的な虐待をしたりといったケースでは、相続人の遺留分を喪失させるのが国民の法律感情に合致するとして、2025年末までに法律を改正するよう求めたのだ。
この判決を受け、韓国の国会は4ヵ月後の8月28日、在籍286人中賛成284人、棄権2名という圧倒的賛成で、「ク・ハラ法」を通過させた。
改正法では、被相続人本人が公正証書遺言を残すことで、扶養義務に違反したり、虐待などの犯罪行為をしたりした相続人の相続権を喪失させることができる。そのほか、本人が遺言書を残していない場合でも共同相続人から、虐待などをしていた相続人がいることを知ってから6ヵ月以内に家庭裁判所に申立てることによって、相続権を喪失させることができるようにする。
先順位の法定相続人が相続権喪失の対象である場合には、その審判の確定により相続人となる後順位の法定相続人(たとえば、兄弟姉妹)からも申立ができるという。改正法は2026年1月1日から施行される予定だ。
