※画像はイメージです/PIXTA

ずっと上昇を続けてきたニュージーランドのオークランドの不動産価格ですが、過去に類を見ない動きを見せています。市役所より発表された2025年6月の居住用一般住宅価格は、2021年6月より-9%の下落。状況を見ていきましょう。※本記事では、オークランド在住で不動産会社を経営する著者が、現地でしか掴めない不動産事情をレポートします。

オークランド地区・住宅の最新のCV価格は下落傾向

2025年6月第2週、市役所が評価する物件価格であるCV(=キャピタルバリュー)の正式発表がありました。

 

2021年6月1日付けの発表があってから、新価格が出るのを待ちわびていましたが、「値下がりする」「物件状況や地域性によって差が出る」との前情報が流れていたことから、懸念していました。

 

5月中には本社から「いま商談中の新規販売物件には注意が必要」「既存の売り出し中の物件価格も、家主様と相談のうえ販売価格について検討が必要」との指示があり、オーナー様との相談のみならず、今後の流れがどうなるのかと、右往左往した数週間でした。

 

今回発表されたCV価格を2021年6月と比較すると、以下の通り数値が変動しました。

 

レジデンシャル(居住用一般住宅)…… -9%

商業用…… -5%

工業用…… +5%

ライフスタイル…… +4%

ルーラル(田舎地域物件)…… +4%

 

平均的な3ベッドルームのタウンハウスでは、前回同等の数字と据え置きでしたが、超高級住宅で400万NZドル台の物件は、17万5,000NZドルのマイナスに。ちなみにわが家も、金額にして20万NZドルのマイナスです。

 

すべての物件がマイナスになったわけではないのですが、期待する上昇はほとんど見込めず、キャピタルゲインを求めていた投資家にとっては、正直痛手です。

 

コロナ前は、CV価格はあくまでも目安であり、実際のマーケット価格はCV価格より10~20%上昇というのが常でした。なかには、40~50%上昇という物件もありました。

 

ところがコロナが一段落し、これから景気改善というときに、住宅ローン金利の上昇の影響でなかなかマイホームを買う人口が思うように増えず、投資家の期待と現実に乖離があり、価格が伸び悩みました。それにより、CV価格より10~20%マイナスという状況になっていたのです。

不動産のプロも「今後の展望が読めない」状況に…

上記のような状況下での新評価額の発表の結果が「平均9%ダウン」であったことから、発表されたCV価格はマーケット評価と同等か、あるいはさらなる下がりもあるのか、われわれ不動産のプロも実態や今後の展望が読めない状況です。

 

専門家のコメンテーターの言葉には「数年後には再度回復し、NZの不動産としての上昇が期待できるだろう」とありました。筆者もそう信じていますし、また実際、そうあるべきだと思ってはいますが、一方で、若い世代のマイホーム購入離れを考えると、価格が下がるということは購入のチャンスでもあります。これを機会に、再度活気が出ることを期待します。

 

とはいえ筆者自身も物件所有者ですし、オーナーの身からすると複雑な状況です。マーケット価格が前回の評価額より2割ダウンで動いていた実例から考れば、新CV価格はマーケット価格に近いともいえます。このようにはっきりと評価額が出ることは、よい面もあると考えています。

 

もちろん、CV価格が同額である、隣り合った同じ広さの土地に建つ家でも、内部の状況が片方はオリジナル、もう片方は全面改装だとすれば、それぞれマーケット価格には差が出ます。

 

現在、秋から冬へと移行している季節のニュージーランドですが、この発表で、不動産売買が活発化するのでしょうか? 下がったとはいえ、いまだに買える状況にはない「マイホームを買いたい若い世代」も動けないのでしょうか? 一方の資産家は、価格が下がり続ける自身の不動産を前に、静観しているべきなのでしょうか?

 

今年のクリスマス前の繁忙期がどう変化するのだろう、と考える今日この頃です。

 

この国で暮らすようになって40年近くたちますが、ここ最近のマーケット価格には驚きを禁じえず、なによりこの20年、評価額が下がるのは初めての経験です。今年9月からの動きについて、この数カ月でしっかり考えていきたいと思います。

評価額の目減りは悪いことばかりではない!

しかしながら、今回の評価額の目減りは悪いことばかりではありません。産出された金額をもとに「レーツ」という固定資産税に似た税金が計算されるのですが、評価額が下がった結果、所有者の税額が抑えられるというメリットもあります。

 

売却をまったく考えていないオーナーの方々には朗報でもあり、今後マイホームを買う方々にとっても朗報だといえるでしょう。

 

ご自身がどの立場にいるかによって、今回の発表の解釈・判断は異なってきますが、いずれにしろ、「通常の流れではない発表」に、オーナーや投資家を含む不動産関係者たちの頭が混乱していることは否めません。

 

筆者はこれから、担当する物件のみならず、過去10年間に販売させていただいた物件の評価額の変化を調査し、今後の営業活動、地域制の参考に考えていきたいと思います。

 

 

一色 良子
Goo Property NZ LTD 代表取締役社長
Arizto Ltd 所属

 

 

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