中国「最大800万人国外脱出」の衝撃。若者は「低意欲・低欲望で頑張らない」か「いっそ国を捨てる」の二択

中国「最大800万人国外脱出」の衝撃。若者は「低意欲・低欲望で頑張らない」か「いっそ国を捨てる」の二択
(※写真はイメージです/PIXTA)

中国で、静かに、しかし確実にある言葉が広まっている。「潤(ルン)」――それは「国外脱出」を意味するネットスラングだ。潜在的な脱出希望者は、最大800万人にのぼるとも言われる。世界第2位の経済大国となったはずのこの国で、一体何が起きているのか。かつての「出稼ぎ」とは異なり、いま、人々を国外へと駆り立てるのは、経済的な理由だけではなく……。舛友雄大氏の著書『潤日(ルンリィー):日本へ大脱出する中国人富裕層を追う』(東洋経済新報社)より、現代中国で静かに進行する“人の流出”という危機の深層に迫る。

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政府に睨まれ、日本に「潤」してきた著名作家

そんな賈氏はコロナ禍の中で日本へ「潤」してきた。中国へ戻るつもりはないのだと言う。神社の境内を歩いていると、彼は石碑が目に入るたびに何が書かれているかチェックし解読を試みていた。さすが好奇心が強い知識人だなと思った。彼の日本語も少しずつではあるが板についてきた。だが、このときはまだ、中国人インテリが東京で大集結しつつあるとは私はまだ想像もしていなかった。

 

賈氏はテンセント傘下のメディア「大家(ダージア)」を立ち上げ、北京・香港での生活をまとめた随筆集『我的双城記』(私の二都記)など複数の著作がある。今では東京大学教養学部の客員研究員を務める。2016年には、習近平国家主席の辞任を求める公開状に関連してか、北京から香港へ飛び立とうとしたときに当局に連行され、10日間にわたって消息を絶ったこともあった。

 

そんな彼の話をじっくりと聞きたく、ある日、私は日本橋の百貨店内にある落ち着いたカフェに呼び出した。白髪の少し目立ちはじめた彼は普段着の知識人という感じで、今日もバックパックを背負ってやってきた。質問すると、「滔滔不絶(タオタオブジゥエ)」(饒舌に)で前のめりになって答えてくれる。

 

──「早発早移(ザオファーザオイー)」(早く稼いで早く移民する)という言葉を以前から唱えてましたよね? あれはいつごろからで、どのような背景があったんですか?

 

賈氏が最初にこの言葉を使い出したのは2010年ごろ。2008年のオリンピック以降、セキュリティチェックや自家用車の運転規制が始まり、北京での生活が面倒になってきたことに端を発するという。

 

純粋に生活の快適さ、幸福感、子供の教育など、あらゆる面で……。

 

──公共サービスのことですね?

 

そうそう、海外のほうがいいに決まっているじゃないですか。移民どうこうの主張、これは正常な国ではオープンに討論すべきでない、家庭で決めることですよね。でも、なぜ中国ではオープンに議論できるんでしょうか? 私はおそらく移民という問題を最初に私的領域から公共の話にした第一人者ですよ。これはある種の(政府)批判の手段なんです。

 

そう、かつて中国で私は周りの人が移民について話すのをよく耳にした。今の中国では、移民自体がセンシティブな話題となっているようだ。いつしか私も「潤日」の人々に会うときはあえて「潤」という言葉は使わないようになった。相手がギョッとしてしまうからだ。

 

中国人の国外流出が鮮明になってきていることは国連の統計からはっきり読み取れる。

 

中国から流出する移民を中国へ流入する移民から引いた合計純移動数は1992年にマイナス87万3,177人の底値をつけた。当時は中国と先進国との経済ギャップが大きかったので、国内から海外へ就労目的の流出が相次いでいたのだ。多くの日本人にとっても、中国人といえば出稼ぎというイメージがいまだに強いのではないだろうか。

 

中国経済が世界第2位に躍り出た2010年から2年後、胡錦濤時代の最後の1年には、合計純移動数がマイナス12万4,641人まで縮小。これも経済大国となった中国で活躍の機会が増えたのだからわかりやすい。

 

 

舛友 雄大
中国・東南アジア専門ジャーナリスト

 

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※本連載は、舛友雄大氏の著書『潤日(ルンリィー):日本へ大脱出する中国人富裕層を追う』(東洋経済新報社)より一部を抜粋・再編集したものです。

潤日(ルンリィー): 日本へ大脱出する中国人富裕層を追う

潤日(ルンリィー): 日本へ大脱出する中国人富裕層を追う

舛友 雄大

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