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「リスクを下げたつもり」が一番のリスクになる理由
田中さんのように、「できるだけリスクを抑えて投資したい」というニーズは非常に多くみられます。特に、教育費や老後資金といった“減らしたくないお金”を運用したいと考える人ほど、「リスク調整型商品」や「元本保証に近い商品」に安心感を抱いてしまいます。
しかし、こうした商品の実態は“リスク調整されていない”ケースがほとんどです。相場が下がるタイミングで自動的に安全資産にシフトしてしまう設計は、その後の反発相場に乗り遅れ、結果的に資産を増やすチャンスを逃すという大きなデメリットがあります。
さらに、こうした商品は、売り手(銀行や証券)にとって「売りやすい商品」でもあります。「リスクが少ない安心な投資商品です」と説明されると、投資に不慣れな人ほど安心して購入しやすいためです。これによって、買い手が本質を理解しないまま購入してしまうというミスマッチを生みやすい構造になっています。
現在、日本では金融リテラシーの低さが指摘されています。内閣府の「金融リテラシー調査(2022年)」によれば、金融商品を購入した人のうちその商品性を十分に理解していなかった人は約3割にのぼると報告されています※。本当に守るべきお金を守るためには、「リスクを取らない=安全」ではないという認識が不可欠です。
必要なのに、多くの人が投資をする前にやらないこと
田中さんのケースを振り返ると、最大の問題は「投資目的の不在」でした。漠然とした将来不安に対して、銀行員から提案された“とりあえずの対策”に乗ってしまった結果、資産形成の基本である「長期・分散・積立」の原則から外れてしまったのです。
筆者が田中さんにまずお伝えしたのは、「目的地を明確にすること」でした。
「何歳までに、いくら必要なのか」
「いまの資産で、どれだけ不足しているのか」
「その差額をどんな手段で、どの期間で埋めていくのか」
このように、ゴールから逆算した“設計図”があってこそ、適切な運用手段が選べます。旅行でさえ現在地と目的地がわからなければ手段を選べないように、投資も同じです。そのための助言を求める場合、助言を求める先の選定も見誤らないようにしましょう。中立の立場から、顧客の人生設計に寄り添った提案ができ、長期的なパートナーとして支えてくれる相手が望ましいです。
田中さんも現在は、目的に応じて複数の資産運用を組み合わせ、リスクとリターンを計画的に管理できるようになりました。
