ワークスタイルの多様化や、働く意識の変化などが理由
アイデアソンがなぜここまで注目を浴びることになったのか、もう少し詳細に見てみよう。そこには、我が国を取り巻く環境や社会構造の変化と、その変化が及ぼすさまざまな影響が考えられる。
我が国を取り巻く変化とは、たとえば人口構造の転換、グローバル化の進展と質的変化、コモディティ化の進展、イノベーションへの希求と源泉変化、ワークスタイルの多様化と働く意識の変化などが挙げられる(以下図表参照)。
[図表]社会的環境の変化と影響
こうした変化は、産業や生活、都市の構造を変え、主要な市場は徐々にシフトを始めている。テクノロジーの発展は、これまで差別化の要因であった知識や技術の優位性を相対的に引き下げ、これまで中心であった技術起点でのイノベーションや、閉鎖的な環境でのイノベーション創出は、徐々に価値創造の源泉にはなりえないことを明らかにしつつある。
つまり、社会構造の変化とそこから生み出される影響は、社会的課題を顕在化、複雑化させ、不確実性の増大した社会を創り出している。その結果、これまでの成功モデルや知識、経験が通用しない状況をあらわにしつつある。
アイデアソンへの注目という点からは、特に、①オープンイノベーションへの注目、②コ・クリエーションへの期待、③社会価値起点への発想転換、が重要となる。
「オープンイノベーション」に取り組むきっかけへ
①オープンイノベーションへの注目
近年注目されるイノベーションの1つに、「オープンイノベーション」がある。
これまでイノベーションは、自社の内部で秘密裏に進められることが一般的であった。それに対して、オープンイノベーションでは、オープンな関係や場で自社以外の組織メンバーに加え、時には、顧客やユーザーも一緒になってイノベーションの創出を目指すことになる。
つまり、自前主義へのこだわりを捨て、社外の優秀な人材との相互作用を通じて、優れたアイデアを取り入れ、内部と外部の市場経路を活用しながら課題解決を図ることになる。オープンで多様な人材が出入りしながら協働することによって、それぞれが持つ技術やアイデア、強みが組み合わさり、これまでにない新たな価値創造につながるというのだ。
しかし、特に日本企業の場合、競業他社や外部人材、ましてや顧客やユーザーと一緒に新事業や新サービスの開発を行うことが必ずしも得意とは言えない。また、社内だけを見ても、開発部門とマーケティング部門、営業部門が機能分担を行っているため、部門を横断して一緒に開発に取り組むことは少なかったように思える。
そうした中で、アイデアソンは、オープンイノベーションに取り組むきっかけづくりや、社外人材との協働に向けた素地づくりという点でも注目を集めている。
この話は次回に続く。