頑張っても「生活がどんどん味気なくなっていくんです」
36歳の佐藤さんが抱えるもう一つの悩みは、「老後の生活への不安」です。
厚生労働省の将来推計によると、2007年に生まれた子どもの半数が107歳まで生きる可能性があるとされています。「人生100年時代」と呼ばれる時代背景の中、現役世代の老後資金不安はますます強まっています。
「今は月に3万円ずつ貯金していますが、まとまった老後資金が貯まるのはずっと先の話。車の修理や医療費のような予期せぬ支出があれば、貯金はすぐに底をつきます」
生活のために削るのは、まず「娯楽費」。外食や旅行は控え、休日は自宅で過ごすことが増えました。
「無駄遣いはしていないつもりです。でもこうしてどんどん娯楽を削っていくと、生活がどんどん味気なくなっていくんです」
「今のままではいけない」と副業も検討していますが、本業の拘束時間やスキルの壁があり、現実的な選択肢が少ないのが実情です。
佐藤さんのように、収入は平均的でありながらも生活に余裕が持てない層は、今や少なくありません。
政府は新NISAやiDeCoなど、老後資金形成の仕組みを整えつつありますが、それらを活用できるのは「余剰資金」がある人だけ。日々の生活で手一杯な家庭には、制度の恩恵が届きにくいのが現実です。
「結局、自助努力だけでは限界があります。副業や投資も気になりますが、日々の暮らしを維持するだけで精一杯。社会全体の制度や支援がもっと必要だと感じます」
物価の上昇、手取りの減少、そして将来への漠然とした不安──。それでも日々の暮らしは続いていく。「平均的」な収入でも、安心して暮らせない社会の構造的課題が今、浮き彫りになっています。
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