ストックオプションは優秀な人材を確保するための重要な武器に
スタートアップが成功するか否かは、経営者以外にどれだけ優れた人材を採用できるかにかかっています。経営者がいかに優れた人物だったとしても、1人でIPOに至るまで企業を育てることは不可能です。優秀な人材をそろえたチームを作ることが必要です。しかし、スタートアップの経営は不安定であり、給与も大企業のように支払うことはできません。それでも、新しい価値を作り上げることの面白さや社会課題を解決するミッションに共感して働いてくれる人はいますが、やはり、そういったやりがい要素だけでは、人を定着させておくことは難しいのが現実です。
そこで、ほぼすべてのスタートアップは、ストックオプションを採用の武器として役員や主要な従業員に付与します。ストックオプションとは、将来の一定期間内に、一定の価格で、その会社の株式(ストック)を買うことができる権利(オプション)です。日本語では「自社株購入権」といい、買える価格のことを(権利)行使価格といいます。
例えば、あるスタートアップで働く人が、行使価格1,000円のストックオプションを1,000株付与されたとします。その時点では、そのストックオプションはほぼ無価値です。しかし、将来その会社が上場して株価が10万円になったときに、その権利を行使すれば1,000円で1,000株を買うことができます。購入価格は1,000円×1,000株=100万円です。そして購入した株の資産価値は、10万円×1,000株=1億円になります。
実際には、ストックオプションの付与は発行済み株式数の何%という形で設定されます。経営者以外の創業メンバーや、資金調達後に参画したCxOの役員には、発行済み株式数の1~2%のストックオプションを付与することもあります。
メルカリは、上場直後の時価総額が8000億円を超えました。仮に1%のストックオプションを付与されていたとすると、80億円分の株式を取得できることになります。
メルカリは例外的な成功例ですが、1,000億円程度までの成長はさほど珍しくありません。ちなみに、2023年の東証グロース市場における上場時時価総額の平均値は151億円、中央値は76億円でした。
一方、上場できなかった場合、あるいは上場しても株価が行使価格を下回っている場合は、ストックオプションの価値はありません。ストックオプションは義務ではなく、権利なのでその権利を行使しなければよいだけで、付与された人が損失を被ることはありません。
このように、ストックオプションは、付与された人にとってデメリットがない一方で、IPOの実現、あるいはその後の株価上昇により、大きな経済的利益をもたらしてくれる可能性があるものです。企業の成長と自分の経済的利益が直結するため、企業価値増大に向けて働くモチベーションをアップさせます。
石割 由紀人
Gemstone税理士法人 公認会計士
税理士
資本政策コンサルタント
注目のセミナー情報
【海外不動産】12月18日(木)開催
【モンゴル不動産セミナー】
坪単価70万円は東南アジアの半額!!
世界屈指レアアース産出国の都心で600万円台から購入可能な新築マンション
【事業投資】12月20日(土)開催
東京・門前仲町、誰もが知る「超大手ホテルグループ」1階に出店!
飲食店の「プチオーナー」になる…初心者も参加可能な、飲食店経営ビジネスの新しいカタチとは?
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】
