お金がたっぷりあるのに、なぜ富裕層は生命保険に加入するのか?…「相続税対策」に効果がある〈保険の種類〉と注意すべき〈落とし穴〉【税理士の助言】

お金がたっぷりあるのに、なぜ富裕層は生命保険に加入するのか?…「相続税対策」に効果がある〈保険の種類〉と注意すべき〈落とし穴〉【税理士の助言】

相続の話し合いにおいて、親の財産を「誰が」「どのように」管理するかは、家族の争いごとを避けるうえでも非常に重要なテーマです。また、多額の財産を相続する際の「相続税」についても、あらかじめ対策をしておくと安心です。本記事では、前田智子氏による著書『相続専門税理士が教える 相続のめんどくさいが全部なくなる本』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・再編集して、相続税対策として使える「保険」について詳しく解説します。

相続税対策にならない保険って?

国税  保険の契約状況によっては、相続税対策にならないこともありますよね。そのあたりもお聞きしたいです。

 

前田  保険に関する税金のルールはけっこう複雑で、契約内容などによって「所得税」「贈与税」「相続税」の3つの税金に分かれます。そのため、相続税対策のために保険に入ったつもりが、贈与税の申告納税を求められることもあり得ます。

 

無知  それは難しそうですね。僕みたいな素人でも、理解するコツはありますか?

 

前田  保険金の税金を判別するときは、「誰が保険料を払って、誰が保険金を受けとるか」ということを確認するのが早いです。

 

所得税がかかるのは、「保険料を支払った人自身が、保険金を受けとる場合」です。たとえば、「お父さんが亡くなったときの保険」に子どもが加入して保険料を支払っていたとしましょう。そうして実際にお父さんが亡くなったら、子どもが保険金を受けとりますよね。

 

[図表2]被保険者と保険料負担者によって変わる生命保険の税金

 

このように、保険料を払った人が保険金を受けとる場合、相続税ではなく所得税がかかります。お金の流れからすると、自分の資金を運用したイメージですね。

 

国税  そうすると相続税の節税にはつながらないですね。贈与税になるケースは?

 

前田  これはやや複雑なのですが、「被保険者(保険がかけられている人)」「保険契約者(保険料負担者)」「保険金の受取人」がすべてバラバラになる場合です。

 

お父さんが亡くなったときのために、お母さんが保険契約をして、受取人を長男にしていたような場合をイメージしてください。すると、お金の流れからすると、お母さんがお金を出して、お父さんが亡くなると、長男がお金をもらう形になるじゃないですか。そうすると、お母さんから長男に贈与があったとみなされて、贈与税の対象になるんです

 

国税  相続税の節税をするなら、亡くなった被相続人自身が、生命保険の被保険者(保険がかけられている人)であり、保険契約者(保険料負担者)になっていなければならないのでしたよね。

 

前田  はい。ここで注意が必要なのが、「相続税の対象になるけれど、非課税枠を使えない」というケースが2つあることです。

 

 1つは、「相続人以外の人」が保険金の受取人に指定されていた場合です。たとえば孫や相続人の配偶者など、相続人以外の人が保険金を受けとる場合は非課税枠を使えません。

 

もう1つは、「亡くなった人が被保険者ではない保険」が相続税の対象になる場合で、こちらも非課税枠を使えません。たとえば、お父さんが、お母さんを被保険者にする生命保険をかけていて、お父さんが先に亡くなったような場合です。

 

無知  ええっと、頭が混乱してきました……被保険者(保険がかけられている人)であるお母さんはまだ亡くなっていないので、保険金は出ないですよね。それでも相続税がかかってしまうのはひどくないですか?

 

前田  たしかに、まだ保険事故が起きていないので保険金は出ませんが、保険の〝権利〟としての価値があります。その権利を相続人が引き継ぐことになるので、相続税がかかるのです。

 

 たとえば無知さんがお父さんから、「10年後に満期になる定期預金」を相続したと考えてください。その定期預金は満期になるまで使えませんが、財産としての価値はありますよね。亡くなった人が被保険者ではない保険も、同じようなイメージなのです。

 

国税  話をまとめると、相続税対策のためには、「被相続人が保険契約者(保険料負担者)で、なおかつ被保険者(保険がかけられている人)になっている生命保険」に入る。そのなかでも「一時払い終身保険」が使い勝手がいい、ということですね。

 

前田  バッチリです!

 

前田智子
相続専門税理士

 

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※本連載は、前田智子氏による著書『相続専門税理士が教える 相続のめんどくさいが全部なくなる本』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・再編集したものです。

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