●人物紹介
・前田智子…これまで4,000件以上の相続相談を扱ってきた税理士・行政書士。
・国税書夫…東京国税局の元国税専門官。国税局を退局後、マネーライターに転身。
・無知相続…現在52歳、実家の相続について考えたことがない“相続対策の素人”
親の財産は誰が管理する?人選ミスが「家族の争い」の火種に
前田:相続の話し合いをするときは、親の財産を誰が管理するかも決めておきたいテーマです。親が認知症になったり、入院したりすれば、家族の誰かが預金などを管理しなくてはいけませんから。
ただし、ここで任せる人を間違えると、あとでとんでもないモメ事に発展する可能性があるので、注意してください。
無知:モメ事というと?
前田:代表的なトラブルは、財産の使い込みです。同居家族がキャッシュカードで勝手に現金を引き出して、相続財産が減ってしまうことはよくあります。
そうすると、親と離れて暮らしていた家族としては、納得がいきませんよね。親の預金が数千万円あると思っていたのに、フタを開けてみたらほとんどのこっていない……となると確実にモメます。
無知:それはヤバすぎますね。
国税:高齢になると家族に財産の管理を任せるのは普通だと思いますが、安易に任せられませんね。どうすればトラブルを防げるのでしょう?
前田:複数人で相互監視することが大事です。私的な使い込みがあれば、バレるようにしておくのです。
無知:たとえば、親のネットバンキングに家族全員がアクセスできるようにしておくとか?
前田:それもいいのですが、高齢の親がネットバンキングのIDやパスワードを得られるかという問題があります。一番シンプルなのは、家族が集まるタイミングで通帳などを全員でチェックする方法です。
たとえば、長男が親の財産の管理を任されたのであれば、正月に長男が預金通帳を見せて、1年間のお金の使い道を説明するといったような形がいいと思います。
国税:それは簡単にできそうです。ただ、離れて暮らす家族としては、「使い道の説明で嘘をついているのでは?」という疑念は残りますよね。
無知:たしかに。親の口座からお金が出ていても、生活費や医療費として使ったといわれれば、それ以上追及しにくそうですし。
前田:そのような疑念を避けるためにも、親のお金の管理を任された人は、普段から領収書を保管したり、「現金出納帳」をつけておいたりすることが大事です。1円単位まで細かく管理する必要はありませんが、大きな支出はあとから説明できるようにしておくべきでしょう。
