相続対策と事業承継対策を正しく区別する
法人生命保険を検討する際に注意したいのは、相続対策と事業承継対策を混同しないことです。この二つは似ているようで、本質的にはまったく異なります。
相続対策は、経営者が亡くなった際の資産承継をスムーズに行うための準備です。特に自社株式の分割、納税資金の確保、遺産分割トラブルの防止といった観点から、死亡保険金を活用するケースが多いです。
一方、事業承継対策は、経営者が存命中に次世代の後継者へ会社の経営権を譲るプロセスを指します。ここでは会社の事業性の見極め、経営者本人の引退のタイミング、株式の移転手続きなどが中心課題となり、相続とは性質が異なります。
このように、相続と事業承継は別々の視点で考え、それぞれに応じた適切な保険設計と資金対策を行うことが重要なのです。
【これからの法人保険活用】正しいアプローチとは?
今後の法人生命保険活用において、求められるのは「保障と資金準備のバランスを取る設計」です。単に節税効果を狙うのではなく、経営者のライフプランや事業戦略をしっかりと踏まえたうえで、本当に必要な保障と資金計画を設計する姿勢が求められます。
たとえば、若手経営者には死亡保障を重視したプランを、壮年期には老後資金形成を支援する貯蓄型プランを、高齢期には相続税納税資金を確保するための死亡保険を、それぞれ組み合わせて設計することが理想です。
また、福利厚生目的の養老保険を検討する場合には、対象者を限定しないよう社内規定を整備するなど、税務リスクにも十分配慮しなければなりません。
加えて、税制や保険商品は常に変化しているため、最新情報をキャッチし続け、必要に応じてプランを見直す柔軟性も欠かせません。信頼できる税理士や保険コンサルタントと連携し、継続的に対策を進めていくことが成功のカギとなります。
まとめ:いまこそ、正しい法人生命保険活用を
法人生命保険は、経営者と会社の未来を守るための強力なツールです。しかし、制度改正により、単純な節税目的での活用はできなくなり、真に必要な保障・資金準備にフォーカスする時代へと移行しました。
これからは、経営者自身のライフステージや会社の状況に合わせて、適切な保険プランを設計することがなによりも重要です。相続対策と事業承継対策を区別し、両者に応じた正しいアプローチを行うことで、経営者もご家族も安心して未来を迎えることができるでしょう。
法人生命保険の活用を検討される際は、ぜひ本記事を参考に、いま一度、戦略的な見直しを進めてみてください。
岸田 康雄
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
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