税理士への相談で判明した“姉のミス”
税理士が申告書と税務署から届いた内容をそれぞれ確認したところ、追徴課税を受けた原因は「2つの申告漏れ」にあったことがわかりました。
まず、母は亡くなる前の3年間、姉に年110万円の「生前贈与」を行っていたようです。しかし、この贈与は「生前贈与加算」の対象となり、相続財産に含める必要がありますが、姉が相続税申告を行う際にこれが漏れていたことがわかりました。
また、母は哲夫さん名義の通帳にも3年前から年110万円を入金していたそうです。しかし、税理士に相談するタイミングまで哲夫さんはこのお金の存在を知らず、これが母親の名義預金であると判断されました。
これにより、合計660万円が申告漏れ扱いとなり、追徴課税を受けたようです。
なにも知らされていなかった哲夫さんは、思わずその場で姉に電話をかけ、激昂。
哲夫「贈与のこと、俺なにも知らなかったんだけど。一緒に住んでたらなんかわかるもんじゃないの? 150万円、絶対払わないからな。そっちで頼む」
姉「ちょっと待って、それは違うんじゃない? 申告のミスはたしかに私のせいかもしれないけど、贈与のことを知らなかったのは私のせいじゃないでしょう?」
哲夫「は? なに言ってんだよ。全部姉貴のせいだろ! お前が払え!」
「150万円の追徴税」をめぐって、哲夫さんと姉の間には深い亀裂が生じてしまいました。
毎年110万円ずつでも追徴税を課されるケース
年間110万円までの贈与が非課税であることは広く知られています。
ただし、贈与を始めてから3年以内に贈与者が亡くなってしまった場合は、たとえ年110万円ずつ贈与を行っていたとしても相続税の課税対象です。これを「生前贈与加算」といいます。
そのため、母が姉に行った3年×110万円の贈与は、相続財産に加算されるべきものでした。しかし、姉はこの分の申告ができておらず、税務調査で申告漏れを指摘されてしまいました。
また、母が哲夫さん名義の通帳に行った“生前贈与”については、本人が贈与を認識していなかったことから「名義預金」と判断され、追徴税を課されてしまったのでした。
