ドラッカーが説く“企業の目的”
「そもそも“企業の目的”とはなんでしょうか」
私は、中小企業の経営者や管理職向けの研修やセミナーでよくこの質問をします。経営者や管理職の方からよくある回答としては、「売上の拡大」「利益の追求」などです。また、「顧客満足」「社員の雇用」「納税」などの回答もありますが、皆さんはどうお考えになりますか。
私は、売上や利益は企業の目的ではなく、事業継続のための手段であり条件にすぎないと考えています。
P・F・ドラッカーも、著書『現代の経営(上)』(ダイヤモンド社)で「事業体とは何かを問われると、たいていの企業人は『利益を得るための組織』と答える。たいていの経済学者も同じように答える。この答えは間違いではないが的外れである。……もちろん、利益が重要でないということではない。しかし、利益は企業や事業の目的ではなく、条件なのである」と述べています。
企業にとって本当に重要なことは「社会に貢献でき、世の中の人から必要とされること」だと考えます。
つまり「社会貢献」ということです。それが、企業の目的でありゴールだと考えるのです。そうでなければ、事業の継続はあり得ないと思うのです。
最上位にあるのは「社会貢献」であり、そのためには「適正な利益」が必要になります。その「適正な利益」は、「顧客満足」から生まれるものであり、そして、「顧客満足」をいちばん底から支えているのが「社員の定着・成長」であると考えます(図表1)。
会社の目的が売上・利益ではなく、社会貢献であるということは、個人の仕事の意義や目的がお金のためや生活のためだけではなく、人の役に立つこと、世の中から必要とされることであることと同様であると思います。
経営・人事コンサルタントが提唱する「成長支援型人事制度」とは
現在、多くの中小企業で行われている人事制度は、まだまだ「評価と賃金を決めるためのツール」ととらえられているのが現実です。
表向きでは組織活性化、社員の意欲向上が重要だといわれることもありますが、最終的には、公平に評価をして、公正に賃金を支払うことができさえすれば、それでいいと思われているところもあります。
それに対して、「成長支援型人事制度」は、公平な評価や公正な賃金決定だけでなく、社員の定着・成長を促進し、その結果、「会社の業績を向上」させ「事業の継続」を図るものなのです。
いくら公平な評価や公正な賃金決定をしたとしても、それだけで社員が定着・成長するわけではありません。それだけで「ここで働きたい!ここでもっと成長したい!」と思えるような会社になることはできないのです。
