「働きがい」のある会社とは
社員のやる気や意欲が高い会社というのは、働きがいがある会社といえます。多くの人がそのような職場で働きたいと考えているはずです。一般的に「働きがい」とは、次のような要素で語られることが多いです。
- 心の満足度:働くことで得られる喜びや価値
- 誇りと意欲:自分の仕事に誇りをもち、自発的に頑張れること
私は、これを次のような方程式で定義しています。
つまり「働きがい」とは、仕事そのものの達成感や役に立っている喜び、やりがいなどを通して得られる自分自身の内的実感といった「成長・貢献実感=内的動機」と、安心して快適に働くことができる労働条件や雇用環境、会社の方針や働き方、職場の雰囲気といった「働きやすさ=外的環境」との2つの要素の掛け合わせから成り立っているということです。
ハーズバーグの二要因理論でいえば、前者の「成長・貢献実感」が動機づけ要因、後者の「働きやすさ」が衛生要因にあたります。私はこれを研修で伝えるときは、[図表1]のように「働きがいとは」をホワイトボードに書いて説明しています。
「成長・貢献実感」が高い職場には、次のような特長があります。
- 自分の未来が描ける:挑戦する場があり、キャリアパスが明確で成長機会が提供される
- 認められる喜びがある:頑張りと承認され成長を促す人事制度がある、やりがいが感じられる、社員の意見やアイデアが尊重されている
また、「働きやすさ」が高い職場には、次のような特長があります。
- 安心できる:会社に明確なビジョンと価値観がある、長期的に雇用が安定している
- 快適さと満足感がある:良好な職場環境と人間関係、給与や福利厚生が充実している
- 自分の人生に沿える:柔軟な働き方、ワークライフバランスが尊重されている
「働きがい」を感じるバランス
この「成長・貢献実感」と「働きやすさ」の両方のバランスがとれた状態、すなわち、4象限の右上あたりに位置する職場(イキイキ職場)が、「働きがい」を多く感じることができると考えています。
これが、「成長・貢献実感」ばかりが高くて、「働きやすさ」が低い職場(バリバリ職場)は、個人への負荷や心理的負担が必要以上に大きくなってしまい、いくら「成長・貢献実感」があっても、「働かされている」「毎年、高い目標ばかり与えられてしんどい」「成果が達成できないと、叱責される」という感覚になってしまいます。
それでは「働きがい」は感じられません。それどころか、一歩間違えるとパワハラなどが起こるブラック企業になってしまい、離職率が高くなるおそれがあります。
その逆に、「働きやすさ」ばかりが高くて、「成長・貢献実感」が低い職場(ユルユル職場)は、一見すると、仕事が楽で休日も多く、居心地が良いホワイト企業のように思えますが、「このまま勤めていても、自分は少しも成長できそうにない」「仕事は楽なのだけれど、自分が何かの役に立っているという手応えがない」「目標値が低く、やる気が出ない」などと思われて、成長意欲が高くて、優秀な社員から辞めていくという状況が起きる恐れがあります。
それに、休暇や賃金額などの条件面というのは他社との比較が簡単なので、会社としては条件をますます上げないといけなくなるという〝いたちごっこ〟になってしまい、ホワイト企業のほうがかえって離職率が高くなるという現象も実際に起こっています。
このように「働きがい」のある会社になるためには、衛生要因である「働きやすさ」をベースとしながら、同時に、動機づけ要因である社員の「成長・貢献実感」を高め、イキイキ職場を目指すことが重要になるのです。

![[図表1]働きがいとは](https://ggo.ismcdn.jp/mwimgs/a/7/540/img_a78d9aa0fc12b87788fb17e25cf21fb489819.jpg)