そもそも評価は何のために行うのか?
私が実践している「成長支援型人事制度」は、一般的な「公平に評価をして、公正に賃金を決める」だけの人事制度とは違います。「そもそも評価は何のために行うのか」について、人事制度の教科書類には、
- 社員の能力や企業への貢献度を評価することで、昇進や昇給などの処遇を公平・公正に行うため
- 社員に対してなんらかの処遇で差をつけることができるようにし、公平感のある処遇の分配を行うため
- 賃金の配分やコントロールをするため
などと記載されています。それ以外にも、
- 社員のモチベーションを向上させ、組織活性化や人材育成を促進するため
- 社員一人ひとりの現状を把握し、育成に活かすとともに評価結果をもとに組織におけるマネジメントに活用するため
- 会社の価値観を共有、浸透させ企業文化、会社のカラーを醸成していくため
といった意味も記載されています。
しかし実態を見ていると、主に給与や賞与を決めるために評価が行われているのが現実です。これは、あくまでも、評価は会社が社員の給与や賞与を決めるために行われていて、本人の成長や意欲向上のために行われているのではないことを物語っています。
人は他人から点数をつけられることに抵抗がある
そもそも人は他人から評価されるということが好きではありません。評価されるということは、どこか自分に〝値段〟を付けられているような気がしてしまい、あまり気持ちの良いものではないからです。
特に会社の上司から〝上から目線〟で評価されると、どこか値踏みをされているような嫌な気分になることもあるのではないかと思います。
それに、点数を付け、その結果を本人にフィードバックしたからといって、それが必ずしも本人のやる気や成長意欲の向上につながるわけではありません。
「今期は5点満点の3点だった」と結果を言われたとしても、それだけでは「はい、分かりました」で終わってしまい、成長意欲が高まることなどないのです。
これは、学校のテストと同じで、80点や90点という高い点数を取った生徒であれば「もう少しで100点だったのに! もっと頑張ろう!」とやる気がみなぎるかもしれませんが、いつも30点や40点という低い点数を取り続けている生徒は「まあ、こんなもんだ」「授業聞いていても、よく分からないし」と、やる気も起きないまま低空飛行で、卒業していくということになると思います。
学校のテストは、同じ授業を受け、同じ問題を解くわけですから、公平・公正なものですが、全員の成長意欲の向上にはつながらないのです。成長意欲の向上につながるのは、せいぜい上位2割の生徒だけで、それより下位の生徒はあまり変わらないのです。
