「成長・貢献実感」を高めるために必要なこと
成長・貢献実感とは、自分の仕事を通じて「成長できている」「世の中に貢献している」「人から頼りにされている」という充実した感覚をもつことです。人が成長や貢献を感じる瞬間には共通点があります。それは、他者からの感謝や称賛、認知が得られるときです。
例えば、次のような言葉をかけられたとき、自分の努力や存在意義を強く実感できると思います。
「ありがとう。あなたのおかげでこの製品が完成したよ」
「一見何げない仕事のように見えるけれど、あなたの仕事は、実に多くの人に役立っている大切な仕事なんだよ」
「よくやったな。君の努力があったからこそ、ここまで達成できたんだ」
こうした言葉を通じて、上司や周囲の人が部下に寄り添い、認める姿勢を見せることが、部下の成長・貢献実感を高めるのです。
しかし、中小企業の現場を見渡すと、このようなフィードバックが苦手な経営者や上司がとても多いように思います。彼らの多くは、これまで自力で困難を乗り越え、もがき苦しみながら成長してきた経験から、次のように考える傾向があります。
「なぜ私が部下に寄り添わなければならないのか」
「部下自らが苦しむ経験をする必要がある」
「甘えさせるだけで、一人前にはなれない」
「自分のことは自分で考えるべきだ」
もちろん、自分を信じて自力で道を切り拓く姿勢は重要ですし、考え方自体は間違いではありません。
しかし、それだけでは成長・貢献実感を育むには不十分です。むしろ、上司が部下の努力を認め、フィードバックを与えることで、彼らの内発的動機を引き出す土台をつくる必要があります。
今後の企業成長には「寄り添い」と「適切な評価」の文化を醸成し、部下が自らの成長と貢献を実感できる職場環境を整えることが欠かせないのです。
荻須 清司
株式会社エニシードコンサルティング 代表取締役
