認知症に備えはできるのか
認知症は“ならない”ということができず、“いつなるか”というだけの問題。120歳まで生きていたらほぼ全員が認知症になるといえます。そのため自分もなるものだと思っていた方がいいとは思いますが、できる予防としては「健康な生活を送ること」です。
認知症予防の内容は、生活習慣病の予防策とほぼ共通しています。「肉の過食を避ける」「適度な運動」「野菜の積極的な摂取」「よく噛んで食べる」などが挙げられます。世界保健機関(WHO)のガイドラインでも、身体活動や禁煙を含む12項目が推奨されています。
ですが、老化がアルツハイマー病の主要なリスク因子であることは広く知られていることであり、厚労省の「認知症および軽度認知障害(MCI)の高齢者数と有病率の将来推計」によると、認知症の有病率自体が60代、70代、80代…となるにつれて上がり続け、90歳以上になると5割以上の方が認知症に罹患しています。また認知症の前段階にあると言われる軽度認知障害(MCI)※の有病率も含めると、90歳以上の有病率は70%に達します。
※ MCI:もの忘れなどの軽度認知機能障害が認められるが、日常生活は自立しているため、認知症とは診断されない状態。将来的にアルツハイマー病などの認知症へ進行する可能性がある。
人生50年の時代は、多くの方が認知症を発症する前に他の原因で亡くなっていたため、認知症の方は非常に少数でした。しかし、人類が「長寿」という目標を達成した現代では、結果として認知症と向き合う方が増えています。これは、認知症が老化に伴って誰にでも起こりうる現象の一つといえるでしょう。
そうしたなかで、認知症の問題に真正面から向き合い、自ら積極的に予防に努めることは非常に困難です。人は何かを得ることで評価されてきたため、記憶を含め様々なものを失っていく老化の過程を受け入れるのは心理的に極めて難しいからです。
