認知症がもたらす金銭トラブルの実態
行方不明、ご近所問題、ゴミ屋敷等、認知症によるトラブルは枚挙にいとまがありません。記憶が失われるという認知症の特性上、ゴミ出し日を間違えたり、物を紛失したりすることは日常茶飯事です。さらに、認知症のタイプ(例:前頭側頭型認知症)によっては、万引きや、衝動的に店の商品に手を出してしまうといった行動が見られることもあります。
例えば、自転車で買い物に行き、乗ってきたことを忘れて徒歩で帰宅し、再び新しい自転車を購入してしまうというケースがあります。また、症状として取捨選択が困難になり、物を捨てられずにゴミ屋敷化してしまうのも典型的な例です。
そして、認知症になられたご本人が多額の資産を持っている場合、資産のない人に比べると、より深刻なトラブルを引き起こす可能性があります。というのも、あればあるほど使ってしまい、事態が悪化しやすくなるためです。
例えば1週間で100万円、ひと月では500万円使ったなどというケースもあり、しかも、そのお金が何に使われたか誰にも分からないというような事例も見受けられます。
ご家族側が「本人のお金だから、どう使おうと構いません。もう諦めましたし、覚悟を決めました」と割り切れれば、介護者の心身の負担は軽減されるでしょう。しかし、「どうにか使うお金を制限させたい」となると、ご本人とご家族双方にとってストレスとなります。
お金を使う行為というのは、自分で外に出て、選択して、お金を支払うことをその時点で決めているということです。その判断が適切かは別として、そうした行為ができる間は本人の意思が介在します。いずれこれらの行為が難しくなる時期は訪れますが、それまでは家族の考えだけで資産を守ろうとすることは非常に困難といえるでしょう。
