お話を通して人生で大切なことを教える
幼い子どもに物事を伝えるとき、直接的に「こうしなさい」と指示をしても、素直に聞いてくれるとは限りません。特に、「君が悪い」と責めるような伝え方では、子どもは防御的になり、耳を閉ざしてしまいます。
そこで活用したいのが「物語を通じて伝える」方法です。例えば、子どもが幼稚園で友達とケンカをした場合、その出来事について直接アドバイスする代わりに、太郎くんと花子さんを主人公にした作り話を用意します。
「昔々、ある町に太郎くんと花子さんが住んでいました。花子さんと太郎くんがブランコの順番でケンカをしてしまいました。太郎くんは次の日、自分から花子さんとお友達に『ごめんなさい』と言って謝りました。でも花子さんは『私は悪くないもん。悪いのは太郎とみんなだから』と言って、ぷんぷんしていました。そうこうするうちに花子さんと遊ぶお友達がだんだんいなくなってしまいました。花子さんが自分勝手で人のせいにばかりするからです。花子さんはいつもひとりぼっちで寂しく過ごしています。太郎くんはみんなと仲良く園で楽しく遊んでいました」という具合に進めていくのです。
子どもは自分の話だとは思わずに夢中で聞いてくれます。そして、話の最後に「どう思う? 花子さんみたいな行動でいいと思う?」と問いかけます。子ども自身が答えを考え、「僕は太郎くんのようになりたい」と気づくように仕向けるのです。こうした話を通じて、自然と望ましい行動を理解させることができます。
子どもが友達に対して自慢をしてしまう場合も、同じく物語を用いて教えることが効果的です。「自分がすごいと思って友達にあれこれ自慢していた花子さん」の話を作り、それが友達を失う結果につながることを示します。最後に「今の話、実は君に少し似ているところがあるかもしれないよ」と伝えます。そして、「自分が成功したときは『みんなも一緒に頑張ろう』と言える人になれると素敵だよね」と提案するのです。
「褒められたら『まだまだです、これからもっと頑張ります』と返す」「友達がすごいねと言ったら『一緒に頑張ろう』と励ます」など、具体的な振る舞いを教えることも大切です。そうすることで、自分だけが頑張るのではなく仲間をも引き上げ、仲間とともにチームとして頑張るという道を示せます。
直接「自慢するな」と伝えるよりも、物語を通じて「なぜ自慢するとよくないのか」を考えさせるほうが、子どもにとって心に残りやすくなります。また、昔話や偉人伝を活用するのも良い方法です。これらの話を通じて、子どもにとって大切な価値観や行動のあり方を自然に学ばせるとができます。
人として大切なことは物語を通して伝えます。子どもがより良い行動や考え方を身につけられるよう、親としてたくさん「良い話」をしてあげましょう。
