関税による物価上昇の影響は限定的
米労働省が公表した2025年4月の消費者物価指数(以下、CPI)は、前年比+2.3%と事前予想(同+2.4%)を下回りましたが、変動の大きい食料品及びエネルギーを除くコアCPIは前年比+2.8%と市場予想通りの結果となりました(図表1)。
4月には25%の自動車関税や10%の相互関税が発動されたことに加え、中国からの輸入品に対して125%の関税が上乗せ(145%の関税が適用)されたものの、4月のCPIへの影響は限定的なものにとどまりました。
コアCPIについて、物価の瞬間風速を示す前月比は+0.2%と市場予想(+0.3%)を下回りました(図表2)。
また、FRBが注目する基調的なモメンタムを確認すると、3ヵ月前比年率値(3月:+2.96%→4月:+2.10%)、6ヵ月前比年率値(3月:+3.03%→4月:+2.97%)ともに減速した格好となり、基調的なインフレ率は緩やかながらも、FRBの2%目標に向けて低下していることが示されました。
コアCPIのうち、コア財は前月比+0.06%と小幅ながらプラスに転じました。中国からの輸入依存度が高い品目をみると、家電製品(前年比+0.84%)は高い伸びを示したものの、娯楽用品(同+0.41%)は3月に下落した反動という側面があるほか、衣料品(同▲0.20%)に至っては下落に転じています(図表3)。
関税発動前に、駆け込み輸入によって在庫が急増したこともあり、関税の影響は限定的なものにとどまっている可能性があります。
関税の影響を見極めるうえで財価格の動向に注目が集まる一方で、サービス価格は緩やかながらも鈍化していることが示されました。
コアサービスは、前月比+0.29%と単月で加速したものの、3ヵ月前比年率値(3月:+3.54%→4月:+2.62%)や6ヵ月前比年率値(3月:+3.58%→4月:+3.48%)は低下しており、前年比では+3.6%と2021年10月以来の低水準となりました。
特に、ウエイトの大きい家賃が安定化していることは、FRBに一定の安心感をもたらしていると考えられます。
4月は民営家賃の伸びがやや加速した一方、より重要な帰属家賃は鈍化しました。前年比ベースでも、家賃を含めた住居費は8ヵ月連続で緩やかな鈍化を続けています。
4月のCPIの結果を受けて、中国からの輸入品に対して大幅な関税が上乗せされたにもかかわらず、関税の影響は軽微であると評価するのは時期尚早と考えられます。輸入在庫が掃けた段階で、徐々に関税分が価格に上乗せされるとみられるからです。
もっとも、最近の米中貿易協議の合意を受けて、関税が大幅に低下したことを考慮すると、インフレ率が大きく上振れる可能性は低くなったとみられ、FRBは年後半にも利下げを再開することが予想されます。
東京海上アセットマネジメント
※当レポートの閲覧に当たっては【ご留意事項】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『【米ドル円】東京海上アセットマネジメントが振り返る…5月第2週の「米国経済」の動き』を参照)。
※本記事は東京海上アセットマネジメントの「TMAMマーケットウィークリー」の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が文章を一部改変しております。
※全文は「TMAMマーケットウィークリー」をご確認ください。
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